経団連くりっぷ No.111 (1999年10月28日)

なびげーたー

「循環型社会」の推進をめぐる動向

参与 太田 元


ダイオキシン問題や処理・処分場のひっ迫を背景とする、国民の廃棄物問題への関心の高まりを契機として、循環型社会の推進に向けた道筋について、産業界としても早急に考え方をとりまとめていく必要がある。

  1. 政治の動き
  2. 自自公政権樹立に向け、自民・自由・公明の三党は9月下旬にまとめた政策合意において、2000年度を「循環型社会元年」と位置付け、廃棄物の発生抑制、再生利用、適正処分の基本原則を盛り込んだ「循環型社会法(仮称)」の制定を図るとともに、予算、税制、金融面等において環境対策に重点的に配意する方針を打ち出している。

  3. 政府の動き
  4. 6月のダイオキシン対策関係閣僚会議では、既存の廃棄物関連法制の改正および新法の可能性を含め所要の法案を検討し、リサイクル促進等のための新たな制度案の次期通常国会への提出をめざすこととした。現在、厚生省は廃棄物処理法の改正に向け、通産省は再生資源利用促進法の改正に向け、それぞれ検討を行なっている。このほか、建設省、農水省においても、次期通常国会への提出を目指して検討中である。

  5. 産業界の考え方と取組み
  6. 産業界としては、自らの業を最も熟知している各産業が、自ら目標を掲げ、資源・エネルギー使用効率の向上や廃棄物の減量化に継続的に取り組むことが重要かつ現実的ととらえてきた。現に、今年が第2回目となる経団連環境自主行動計画のフォローアップにおいても、新たな試みとして、産業廃棄物に関する産業界全体としての目標(2005年度ならびに2010年度の最終処分量の削減目標)を設定、公表することとしており、各業界においては具体的な数値目標の達成をめざした自主的かつ積極的な取組みが行なわれつつある。使用済み製品に関しては、来年から容器包装リサイクル法が全面施行され、再来年から家電リサイクル法が施行され、新たな局面を迎える。

  7. 国民的な議論が必要
  8. 今後、廃棄物のリデュース(減量化)・リユース(再利用)・リサイクルを推進していくべきことは当然であるが、そのためには、国・地方公共団体・産業界・消費者の役割をあらためて見直す必要があろう。特に、リサイクル施設も含めて処分場の確保がますます困難になっているわが国の現状に照らし、地域住民に受け入れられる体制を整えるために行政はどのような役割を果していくべきか、そのなかで、事業者による適正処理のあり方、ならびに責任範囲の明確化をいかに図っていくかがポイントになると思われる。また、産業活動の受益者でもある消費者から、ごみ処理費用を直接負担してもらう等の協力も得る必要がある。いずれにしても、循環型社会の推進に向け、産業界も再検討を迫られている。


くりっぷ No.111 目次日本語のホームページ