行政改革推進委員会(委員長:大賀典雄 ソニー会長、共同委員長:飯田 亮 セコム取締役最高顧問創業者)では、中央省庁等改革基本法が「政府は、郵便事業への民間参入について具体的条件の検討に入るものとする」としていることを受けて、ヨーロッパとオセアニアに調査チームを派遣するなど郵便事業への民間参入のあり方を検討してきたが、3月9日に本委員会を開催し、「郵便事業への民間参入の速やかな実現を求める(案)」をとりまとめた。同提言案は3月28日の理事会の承認を得て経団連の提言として政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。
海外では、イギリス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド等十カ国以上で郵便事業への民間参入を進め、郵便事業体の体質強化とサービス向上の二重の成果をあげている。
こうした動きを受け、中央省庁等改革基本法は、政府は郵便事業への民間事業者の参入についてその具体的条件の検討に入ることを規定している。
政府に対して速やかに中立的な検討の場を設置するよう求めるとともに、郵便事業への民間参入のあり方を提言する。
(以下において郵便事業の自由化は、信書送達の自由化を指す。)
郵便市場は経済の発展につれて着実に拡大しており、今後も電子メール等通信手段多様化に伴うマイナスの影響はそれほど大きくないと予想される。
しかしながら、郵便事業は、1998年度は625億円の赤字となり、1999年度742億円、2000年度596億円の赤字が見込まれている。
郵便事業のコストの6割は人件費であり、構造的にコスト上昇、郵便料金 値上げの悪循環の要素をはらんでいる。
郵便事業を国が行なう根拠とされた「秘密の保持」は電気通信事業自由化で説得力を失ない、「自然独占」も通信手段の多様化、技術革新等によりその論拠が弱まっている。
世界的に郵便事業をネットワーク産業としてとらえ、電気通信と同様の考え方で競争導入を進めようという考え方が強まっている。
電信電話事業は規制緩和と民営化により飛躍的に成長し、安価で多様なサービスが提供されている。郵便事業に競争を導入した国では、同時に国営郵便事業体を公社化、民営化し、黒字転換しており、ユニバーサルサービスを維持しつつ、料金も抑制している。
郵政事業庁およびその後の郵政公社の一層の合理化・効率化を図るとともに、それを加速するためにも、民間事業者の参入を早期に実現すべきである。
郵便事業への民間参入を認めている国では、独占の範囲を手紙の重量、料金で定め、これをスケジュールに従って縮小するという方式を採用している。われわれは、わが国も、2003公社移行と同時に第一段階の自由化を行なうこととし、3年後に競争状態等をレビューして更なる自由化範囲の拡大を検討することを提言する。
第一段階の自由化の範囲
総務省が競争相手である民間事業者を監督することは公正競争上問題があり、中立的な監督機関を設置すべきである。
ユニバーサルサービスの維持は大前提である。民間参入を進めた海外諸国では、段階的な自由化によって影響を見極める一方で、ネットワーク産業は全国ネットワークを保有するものが競争力を有するとの考えに立ち、従来からの郵便事業体のみにユニバーサルサービスの義務を課している。
民間参入を促進する見地から、当面、郵政公社にユニバーサル・サービスを義務付け、競争の進展に応じてファンドの設置や民間事業者による代替を検討することとすべきである。
郵政公社は、中央省庁等改革基本法において、自律的かつ弾力的な経営を可能とするとされているが、一層の合理化・効率化を進めることが求められる。
国際的な動向を踏まえた戦略的な郵便政策の展開が望まれる。
新規参入者も含めて強い郵便事業者の育成を図る必要がある。