経団連意見書/4月18日
地方公共団体の財政は、歳出ベースで国の約1.5倍の規模に及ぶが、近年の税収の落ち込みにもかかわらず、歳出抑制が進んでいないことから、その収支が悪化しており、地方の借入残高は、2000年度末で187兆円に上ることが見込まれている。財政制度委員会(委員長 伊藤助成氏)では、これまで公共事業、社会保障等の分野毎の検討を行なってきたが、こうした地方財政の現状を踏まえ、あるべき地方財政の姿について検討を行ない、標記意見書を4月18日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。
地方税収は低迷しているが、歳出は景気対策として公共事業が拡大されたこと等もあって拡大を続けている。この結果、2000年度の地方債発行額は11兆円、2000年度末の地方借入金残高は187兆円に達する。
2000年度末には38兆円に達する交付税特別会計の借入金の償還の一部は国が負担し、地方債償還の相当部分も国が地方交付税交付金で負担せざるをえず、国の歳出の一層の硬直化は避け難い。
負担と給付の関係の地域格差も深刻であり、地方税収に対する歳出の比率は、都道府県レベルでは、最大と最小の間で約6倍の差が見られる。
地方公共団体が細分化されているため、歳出について効率化・合理化が進まず、歳入も不安定となる傾向が指摘されてきた。また、経済社会の実態と地方行政体制の乖離が住民の帰属意識を一層希薄にし、住民によるチェックとコントロールを弱体化させている。
国から地方公共団体に対し行なわれている財政配分が、地方公共団体における受益と負担の対応関係を不明確にし、歳出の膨張を招いている。
国から地方への財政配分の過程で、財源の地域偏在の是正が行われているが、これが、一部の地方公共団体について負担と受益の対応関係をさらに不明確にし、財政規律を一層弛緩させている。地方交付税は、いわば差額補填的な補助金であるため、地方公共団体の財源涵養意欲を減殺している。
地方分権改革は、地方公共団体の事務を法定受託事務と自治事務に区分しており、行政責任の所在を明確にするものとして評価できる。しかし、以下の問題点がある。
受皿論の検討の回避
地方公共団体の再編成については、検討されていない。
国と地方を通じた行政改革という視点の欠如
国と地方を通じた行政事務総体は縮減されていない。
国と地方を通じた財政構造改革という視点の欠如
地方分権改革も国と地方を通じた財政構造改革と表裏一体のものとして推進していく必要があるが、この点についてのコンセンサスは未だ形成されていない。
地方財政改革は、以下の基本的考え方に立って改革を推進すべきである。
住民によるチェックとコントロールを強化し、歳出の効率化・合理化を推進するとともに、歳入の安定化を図り、さらに人材を確保する観点から、地方公共団体を経済社会の実態に即して大括りに再編する。
国と地方の役割分担を徹底する観点から、国と地方との事務区分に対応した国と地方との経費負担の区分を確立する(現在の事務区分は、再見直し)。
自治事務の経費は、地方公共団体が負担するものとし、財源については、普遍性・安定性を有し、住民個々人が主たる担税者である税を基本とする。
法定受託事務の経費は、新たな国庫委託金により国が負担するものとし、地方交付税交付金等は廃止する。
財源調整を最小限とし、負担と受益の対応関係の一層の明確化を図るとともに、地方公共団体が、税財政上の措置や地方分権を活用した規制緩和等を通じ、定住人口の拡大、企業誘致、観光資源の涵養等をめぐって競争できる環境を整備する。
会計システム改革とこれを通じた歳出構造改革
歳入構造改革
自治事務の経費
法定受託事務の経費
極端に税源に乏しい地方公共団体に限定し、新たな国庫支出金により財源調整を実施する。道州制導入の場合は、当該道州域内の基礎的自治体の共同税により実施する。
地方財政改革のあり方についてコンセンサスの形成を急ぐとともに、地方財政改革の道筋・スケジュールを明確化するため、国と地方を通じた財政構造改革のプログラムを企画・立案し、その実施状況を監視する推進機関のあり方についても検討する必要がある。
当面は、以下のような施策の実施を急ぐべきである。