経団連くりっぷ No.127 (2000年6月22日)

なびげーたー

IT活用に向けて具体策を

産業本部長 林  正


IT活用に向け、沖縄サミット議長国にふさわしい取組みを期待する。

IT革命が世界的な規模で進行している。ITは、単に企業、行政における業務の効率化やサービス向上を可能にするだけでなく、組織の仕組みやビジネスプロセスの変革、あるいは電子商取引をはじめとする新産業の創出など、経済社会構造を大きく変えようとしている。米国が歴史的なインフレなき経済成長を持続しているのも、ITをいち早く活用したためである。わが国の今後の発展もIT革命の対応如何にかかっている。

IT革命は7月の沖縄サミットの主要テーマにもあがっているが、ITがもたらす「デジタル・オポチュニティ」をいかに世界中に拡大していくかについて議論されることを期待したい。同時に、わが国には、サミット議長国にふさわしいITへの取組みを具体的に示すことが不可欠である。

今、わが国に求められているのは、ITの供給サイドと需要サイドが相互に刺激しあいながら発展する好循環を築くことが重要であるという認識を持ち、供給サイド、需要サイド両面の環境整備を具体的に推進することである。

まず供給面では、通信と放送との融合に対応した法整備が必要である。とくにデジタル技術等の進歩によって情報伝送路は通信にも放送にも使えるようになっており、情報伝送については通信・放送の区別をなくすべきである。EUも昨年、こうした考え方を打ち出している。また、情報伝送について、地域通信市場も含めて自由で公正な競争を図るため、現在の事前規制を中心とした事業規制的な法制度を、競争促進的な法制度に転換する必要がある。

つぎに、需要面に関しては、政府が、本年度よりミレニアム・プロジェクトで電子政府の実現や情報リテラシー向上に本格的に乗り出したことは高く評価できる。今後、ミレニアム・プロジェクトの実効ある推進が期待される。同時に、紙を使わない、顔を合わせない、店はサイバースペースにある等の電子取引の特性をふまえ、書面、対面、事業所の設置、物理的な移動を前提とした各種規制を見直す必要がある。経団連では5月にIT化に対応していない制度の見直しに関するアンケート調査結果を発表したが、こうした企業の具体的な要望について早急に検討を行なう必要がある。

国際的にも、南北間の情報格差(デジタル・デバイド)を克服し、世界中の人々がデジタル・オポチュニティを活用できるよう、サミットにおいて、アクション・プランを策定する方向で、わが国がイニシアチブをとることが望まれる。


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