経団連くりっぷ No.129 (2000年7月27日)

第26回OECD諮問委員会総会(委員長 生田正治氏)/7月3日

OECD閣僚理事会で、改訂多国籍企業ガイドラインを採択


OECD諮問委員会は、第26回総会を開催し、1999年度事業報告・収支決算、2000年度事業報告・収支予算等を審議、承認した。当日は、あわせて、外務省の田中均 経済局長より、6月26、27日にパリで開催されたOECD閣僚理事会の模様と、7月の九州・沖縄サミットの展望について話をきいた。(関連記事13頁

  1. OECD閣僚理事会の模様
    1. 世界経済情勢:
      全般的に世界経済は良好な状況にあるが、特に日本経済については、短期的には金融緩和と積極財政、中長期的には財政再建策および規制改革の継続が必要であるとの内容がコミュニケに盛り込まれた。

    2. ニュー・エコノミー:
      低インフレの経済成長、情報通信技術の浸透、労働生産性の向上等が経済の潜在成長率を引き上げており、従来の景気循環論が当てはまらない可能性があるとの議論がなされた。来年には詳細な報告書が出る予定である。

    3. 電子商取引:
      電子認証およびプライバシーの保護、ネット上の犯罪等に加え、デジタル・ディバイドの問題が議論された。

    4. ガバナンス(統治):
      特にバイオテクノロジーと食品安全性の問題に関して議論されたが、遺伝子食品の安全性等をめぐって欧州と北米の対立が顕著であり、科学的な根拠に基づくアプローチの重要性が強調されるにとどまった。

    5. 多国籍企業ガイドラインの改訂:
      贈賄の防止、消費者の保護、環境基準の遵守、経営情報等の開示、児童労働の禁止、等の内容が改訂ガイドラインに盛り込まれるとともに、各国政府による実施面でも規律が強化された。

    6. 有害な税制の除去:
      いわゆるタックス・ヘイブン(租税回避地)と呼ばれる国・地域名を公表し、是正を求めた。

    7. 多国間体制の強化:
      WTOの次期ラウンド立ち上げの重要性では合意したが、投資、環境、競争政策、アンチ・ダンピング等の分野に関して、日米欧間で対立があるため、具体的な目標期限等はコミュニケに盛り込まれなかった。
      さらにOECDは、非加盟国、NGO等市民社会との対話を積極的に行なっている。その一貫として、閣僚理事会にあわせて、経済界、学界、NGO等の参加を募って「OECDフォーラム2000」を開催した。

  2. 九州・沖縄サミットの展望
  3. サミットの主な議題は、

    1. 世界経済の一層の繁栄、
    2. 環境問題、高齢化等の心の安寧、
    3. 紛争の予防等による世界の安定、
    である。特に、1.については、IT(情報技術)を促進する政策の重要性を強調する宣言を出すこととなっている。
    日本は、議長国として、ASEANを中心とするアジア諸国の要望を取り入れたい。また、NGOセンターを設置する等、市民社会との交流も行なう予定である。


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