経団連くりっぷ No.133 (2000年10月12日)

アジア・大洋州地域委員会(共同委員長 立石信雄氏、茂木友三郎氏)/9月27日

ASEANが一つにまとまることが望ましい

−通産省 藤田課長よりきく


アジア・大洋州地域委員会では、通産省通商政策局南東アジア大洋州課の藤田昌宏課長を招き、ASEANの今後の展望とわが国の対応について説明をきいた。当日は、アジア地域における貿易・投資の自由化促進、円の国際化推進などを柱とする2000年度の委員会の活動方針について討議するとともに、提言「日本シンガポール自由貿易協定への期待」(案)の審議を行なった。

○ 藤田課長説明要旨

  1. ASEAN経済の現状
  2. 1997年の通貨金融危機により大変な打撃を受けたASEAN経済は、国により状況は異なるが、総じて回復してきている。因みに、経済成長率は、1999年にプラスに転じ、2000年もプラス成長が見込まれ、為替レート、株価、貿易関連指数などマクロ経済指標は概ね改善している。しかし、特にタイやインドネシアでは、高い不良債権比率、金融セクターの脆弱性など構造的問題は依然として残り、足元に不安感を持ちつつ、再び成長軌道に乗りかけているというのが実情である。

  3. ASEAN自由貿易地域(AFTA)の見通し
  4. 発足当時は政治同盟的色彩が強かったASEANは、次第に経済面での協力関係を指向するようになり、1992年にAFTAの創設に合意した。加盟各国は、2002年までに域内関税率を0〜5%に引き下げ、非関税障壁を撤廃することとなっているが、予定通り実行できるかどうか疑問視する声が少なくない。その理由としては、加盟各国間の経済格差が大きいこと、また、各国が自国産業保護のために例外措置を求める動きへの懸念が挙げられる。したがって、ASEANが一つのまとまりとして進むためには課題が多いといわざるをえない。

  5. わが国とASEANとの関係
  6. 翻って、わが国にとっては、ASEANが一つにまとまることが望ましい。すなわち、政治的には、中国が大きく発展する中で、アジア地域のパワーバランスを維持する必要があること。また、経済的には、各国単独では市場としての規模が小さく、日本企業が事業展開をはかるうえで、一つの市場となる方が好ましいこと。加えて、域内自由化により各種規制緩和も期待できる。
    日本政府としては、日・ASEANならびにASEAN+3(日中韓)という2つの枠組みを通じて、ASEANに協力していく。ASEAN+3は、マハティール首相の提唱したEAEC構想(東アジア経済共同体)とほぼ同じ枠組みであるが、今後の発展の方向によって、域外国との調整が必要となるだろう。


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