経団連くりっぷ No.134 (2000年10月26日)

経団連意見書/10月17日

「商法改正への提言」を建議


経団連では、経済社会の変化に即した機動的な商法整備の必要を訴えてきた。こうした中、法制審議会で商法の抜本改正の検討が開始された。そこで、経団連の商法改正の考え方を標記提言としてとりまとめ、10月17日の理事会の承認を得て、政府等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. はじめに
  2. 経済のグローバル化やIT革命の進展、産業構造の転換、資本市場の拡大などに対応して、商法は、機動的に再編、整備されることが必要である。欧州各国では、既に自国の競争力強化に向けた商法の改正が進められており、わが国も早急に企業関連法制の改正に着手し、世界をリードするスタンダードづくりに繋げることが強く求められる。
    また、新しい時代にふさわしい立法体制の整備が必要である。

  3. 商法改正の基本目標
    1. 強行法規性の緩和と市場重視の法整備−企業の国際競争力の確保
    2. 事業・組織の再編に資する法整備
    3. 資金調達手段の多様化、効率化
    4. ベンチャー・ビジネスの育成
    5. IT活用の推進

    * なお、監査役制度の強化と代表訴訟制度の合理化の議員立法が来年の通常国会に向け、準備されている。経済界は強くこれを支持、推進していく。

  4. 早期に成立を求める事項
    1. ストック・オプション制度の整備
      1. 子会社・関連会社の役員・使用人に付与できるようにすべきである。
      2. ストック・オプション付与対象者の承認手続を簡素化し、対象となる者の数や内訳を示すことで足るとすべきである。
      3. 株主総会の特別決議が必要とされている新株引受権方式について、自己株式方式同様、普通決議とすべきである。
      4. 発行済株式総数の10分の1という付与上限を撤廃すべきである。

    2. 株式分割の際の純資産額規制の撤廃
    3. 株式分割の際の一株あたりの純資産額規制、とりわけ無額面株式についての純資産額規制を撤廃すべきである。また、大幅な株式分割時の障害となる授権資本枠規制を緩和すべきである。

    4. 検査役の調査の見直し
    5. 現物出資、事後設立、財産引受の場合、検査役の調査が必要とされているが、裁判所の選任する検査役に代わって、会社の取締役または発起人が選任する弁護士、公認会計士等が財産の調査を行ない、それを検査役の調査に代えることができる仕組みを導入すべきである。また、新たに設立される会社が出資を受け、または譲り受ける全ての財産の時価の合計額が、簿価以上であることを証明すれば財産の調査を不要とすべきである。

    6. CPの電子登録方式による完全ペーパーレス化
    7. 機動的な発行の利点を活かしながら、CPの発行・流通・償還の全段階における完全なペーパーレス化を電子登録方式によって実現すべきである。

    8. IT時代にふさわしい商法の再編
    9. IT革命に対応するため、IT法制の積極的導入を促すべきである。
      例えば、電子メールによる株主総会の招集通知の発送、議決権行使を認めるべきである。具体的には、

      1. 招集通知、添付書類の書面要件の緩和、
      2. 株主名簿記載の電子メールアドレスへの発信により通知の到達とみなす規定の整備、
      3. 押印要件の撤廃、
      等の措置が講じられるべきである。
      また、電子公告を認めることにより、利用者の負担を軽減すべきである。

  5. 確実に実現すべき具体的事項
    1. 株主総会の定足数の見直し等
    2. 株主総会決議事項の取締役会への委譲
    3. 資本準備金による自己株式消却の特例の恒久化と未公開株式への拡大
    4. 商法開示と証券取引法開示の調整
    5. 有限責任事業組合(仮称:LLC・LLP)制度の導入
    6. 自己株式の取得・保有(金庫株)の容認
    7. 株式の強制買取制度およびキャッシュアウト・マージャーの導入
    8. 種類株式の多様化、弾力化
      −トラッキング・ストックと議決権行使に関わる種類株式の創設
    9. 定款記載目的の柔軟化    等

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