経団連くりっぷ No.142 (2001年2月22日)

中国委員会(共同委員長 千速 晃氏)/2月1日

今後の対外経済政策のあり方

−経済産業省 佐野局長よりきく


中国委員会では、企画部会にてとりまとめた意見書案について審議を行う(6頁参照)とともに、重慶において実施する環境植林協力プロジェクトについて大國植林協力部会長から報告した。また当日は、経済産業省の佐野忠克 通商政策局長から、今後の対外経済政策のあり方について説明をきいた。

○ 佐野局長説明要旨

  1. 通商産業省は、本年1月の省庁再編で経済産業省となった。グローバリゼーションが進む中で、当省が担当するのは、国境を意識した「通商政策」というよりも、「対外経済政策」といった方が相応しくなっている。WTOにおける交渉でも、貿易だけでなく投資や環境など、交渉すべき分野が広がっている。

  2. 1990年代は日本にとって「失われた10年」といわれる。この間、ウルグアイ・ラウンドがグローバリゼーションの進展に伴うサービスや知的財産等の国際取引に対応したルール整備に大きな成果をあげた。一方、欧米ではこれと並行して、NAFTAやEUなどの地域統合を推進してきた。日本は戦後、一貫して多角的自由貿易体制を軸とする対外経済政策をとってきたが、現在では、シンガポールとの間で交渉しているような経済連携協定などを活用して、ハイスタンダードなルールや制度の整備を先行させる多層的アプローチが必要となってきている。世界ではすでに、93の地域貿易協定がWTO協定に則した形で締結されている。

  3. 21世紀の中国をどう見るか。中国を一つの全体として捉えるべきでない。中国は不均質に成長しており、地域による格差はそう簡単には是正されないだろう。これは政治的な不安定要因となる。さらに、中国が世界のシステムに対応しているという段階から、徐々にではあるが、中国の行動で世界のシステムが変わるという段階になりつつある。そうした中で、中国は社会の安定を維持するためにも、持続的・安定的な成長を欲しており、そのために不足する資本と技術の海外からの導入を必要としている。

  4. 新ラウンド立ち上げまでに、中国のWTO加盟が実現することが望まれる。加盟が実現すれば、中国はアジアの地域統合に参加することを目標にする可能性がある。これは、中国が国際社会の目を気にし始めていることの表れにもなろう。中国への経済援助については、日本経済の低迷からしても見直すべき時期にきている。日本にとっても意味のある経済協力に特化していくべきであろう。中国を安心できるマーケット、生産基地にできるかが、わが国にとって最大の課題となろう。そのためにも経済産業省としては、やるべきことをきちんとやっていく所存である。


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