経団連くりっぷ No.143 (2001年3月8日)

駐欧州各国大使との懇談会(司会 佐々木ヨーロッパ地域委員会共同委員長)/2月14日

今後の日欧経済関係の更なる発展を期待


一時帰国中の欧州各国駐在の大使33名ならびに外務省幹部を招き、昼食懇談会を開催した。懇談会では今井会長、田中均外務省経済局長の挨拶に続き、英、独、仏、EU、ハンガリー各国大使より、駐在国の最新の政治経済情勢が説明された。また日欧政府はA来る日・EU首脳会談において、政治・経済などあらゆる分野における関係強化のための新文書を作成することを計画しており、経済分野での経団連からの更なる支援に対する期待が表明された。(4頁参照

  1. 田中 外務省経済局長挨拶
  2. EUの深化・拡大が進行する中で、今後、政府がどのような施策を作り、これに関する民間の役割は何か、またその民間の役割に対して政府がどのような支援ができるのか、これらを考えていくことが日・EU間の最大の課題である。
    次回の日・EU首脳会談で発表される政治文書「日欧協力の新たな10年」では、民間との協力を第一義に捉え、民間相互の投資交流を活発化させていきたいと考えている。

  3. 林 駐連合王国大使説明
  4. 5月3日に予想される総選挙の結果が英国のユーロ参加に及ぼす影響は大きい。
    現政権が成立して4年間が経過した。最初の3年は人気が高かったが、昨年の原油価格高騰の問題で一時支持率が低下した。しかし支持率は再び回復し、現在労働党の支持率は50%超となっている。
    ユーロについては、総選挙後に経済収斂度を睨みつつ国民投票を行い、加入するか否かの決定を行うことになっている。現在、世論の反対は強く、厳しい状況である。ブレア首相自身は、日本はじめ外国からの投資確保や欧州のリーダーとしての立場を維持するためにも英国はユーロに加入すべきであると考えている。

  5. 久米 駐ドイツ大使説明
  6. ドイツでは、1990年代前半の東西ドイツ統一の後遺症による低成長・高コスト構造の是正のため、構造改革が必要とされた。1990年代後半、政府は、グローバル化の進展に伴う新たな課題と、伝統的な社会的弱者の保護といった課題を両立することを最大のテーマとした。
    税制改革は、昨年7月に議会を通過し、所得税や法人税が引き下げられた。特に法人税は25%となり、地方税を加えても37〜8%となる。これにより、一般に高率とされていたドイツの法人税が欧州で中位となる。
    この税制改革においてキャピタルゲインが無課税になることも注目される。この税制改革により、グローバル化の流れの中で企業再編の加速が予想され、経済界、特に金融業界から大きな支持を得ている。今回の税制改革により、ドイツのビジネス環境は大きく改善され、在独日系企業も歓迎している。

  7. 小倉 駐フランス大使説明
  8. EU(ユーロランド)ではユーロの導入による為替リスクが消滅するなど、ビジネスリスクが小さくなっているが、世界的な産業競争激化によりフランス企業には活気がある。
    従業員20名以上の企業では昨年から35時間労働制が導入され、20名以下の企業については今年から導入されている。それもあって失業率は1996年の11.3%から昨年は9.2%まで下がった。インフレ率も1.7%となっており、マクロ経済の見地から考えれば、35時間労働制の成果が上がったと考えられる。
    フランスに進出している日本企業による35時間制への対処方法として、労働生産性の向上(QC)や労働時間の週単位から年単位への変更、パートの雇用などが挙げられる。

  9. 木村 駐EU代表部大使説明
  10. 一時、ユーロのレートは下落したが、現在は回復しつつあり、基本的に順調といえる。EU経済は大変好調であり、欧州委員会の経済担当委員は、最近10年で最高の経済とコメントしている。今年もおそらく2.8〜3%の成長率となると見込まれている。域内経済は若干の減速傾向にあるものの、失業率も10%超から8.1%まで落ち、7%台も目前である。物価上昇率は目標値よりも僅かに高いが、これは原油高も要因である。
    来年1月のユーロ紙幣の流通により、多少の混乱が予想される。米国経済の減速に僅かながら影響を受けるが、概して欧州経済は外部からあまり影響を受けなくなっている。米国経済の成長率が2%下がったとしても、欧州経済は0.15ポイントしか下がらないと試算されている。
    EU拡大については、2004年中旬の第一陣の加盟実現が最短シナリオと考えられている。実際にはこのシナリオが遅れる可能性は強いが、早くても達成は2005年と考えられる。
    加盟交渉においては、農業や環境、人の移動など課題も多く、一定の経過期間が必要である。

  11. 糠澤 駐ハンガリー大使説明
  12. 今のハンガリーは、これまでの500年でもっとも平和であり繁栄している。NATO加盟も果たし、EU加盟も目前である。
    ハンガリーの政治は社会党と青年の党が中心であり、現在は青年の党が政権を握っている。ただどちらの政党もEU加盟を望んでおり、基本的な政策の相違はない。
    ハンガリーでは高成長が持続し、為替も安定している。失業率も低く、国債の格付けも良好である。今後ハンガリーで必要なことは国土整備である。一層の外資の導入を期待している。
    ハンガリーは外資が参入しやすい環境であるため、それが国内構造改革を推進する力となる。日本からの投資も大いに歓迎されている。


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