経団連くりっぷ No.149 (2001年6月14日)
経団連意見書/5月16日
経団連・日経連は、2002年度に予定されている医療制度抜本改革に向けて、共同提言「高齢者医療制度改革に関する基本的考え方」を取りまとめ、経団連の会長・副会長会議および日経連の政策委員会の了承を得て、5月16日、政府・与党関係方面に建議した。当提言は、5月21日の社会保障制度委員会および22日の経団連理事会において追認された。以下はその概要である。
- 現行老人保健拠出金制度の問題点
現行老人保健拠出金制度は、
- 現役世代に老人医療費の負担を自動的に求めるもので、拠出金の増加をコントロールする仕組みがない
- 現役世代の保険財政を圧迫(各保険者の保険料収入の約3割強)
といった問題点が存在。
このまま老人医療費が伸び続ければ、各医療保険財政が破綻する懸念。
- 新たな「シニア医療制度」(仮称)の創設
現役世代の保険制度から、就業形態や疾病リスク等の異なる年齢層を分離し、新たに「シニア医療制度」を創設。
「シニア医療制度」は、対象者の「自立・自助・自己責任」の要素を高めて、負担能力と受益に見合った拠出を求める。対象者の自助努力で賄えない分は、公費によって国民全体で支える。
- 「シニア医療制度」の概要
- 対象者:
- 当面70歳以上(現行老人保健制度と同様)とし、段階的に65歳以上とすることが望ましい(ただし、就業率の動向等により、対象年齢の下限を見直す)。
現役の就業者や家族も「シニア医療制度」の対象とする。
- 保険者:
- 市町村(一部事務組合・広域連合等を活用)
- 財源構成:
- 保険料+自己負担+公費
保険料(現役と同じルール。適切な低所得者対策等。)
自己負担(当面定率1割負担を徹底。最終的には現役と同じルール。自己負担上限額の設定。)
公費(2002年度に5割に引き上げ、段階的に投入割合を高める。疾病リスクの高まる年齢層に対して公費投入面で配慮することについて検討。)
- 公費増分の財源:
- 消費税等の間接税
- 退職者医療制度:
- 現行退職者医療制度(退職〜70歳未満)は当面継続。段階的に役割を縮減。
- 医療費の抑制策
- 公的医療保険制度の守備範囲を見直し、公的医療保険でカバーする医療費総額に一定の目標額を設定することについて検討
- 特に、高齢者医療費を、経済動向・老人人口の伸びを勘案した一定の範囲内におさえるための取組み
- 保険者機能の発揮(例:保険者によるレセプト一次審査の容認、医療機関との割引契約締結の容認、健康診断や保健事業を含めた医療機関との連携等)
- 診療報酬は包括払い化を基本
- 適切な自己負担の設定
- 医療のIT化(例:医療情報の共有化、利用者・保険者によるチェック機能の強化等)
- 公的医療保険制度の守備範囲の見直し
- 公的医療保険でカバーする医療費(特に高齢者医療費)について、一定の目標値の設定
- 改革の進め方
中長期的な改革の姿の提示
中長期的な改革の姿と移行までのタイムスケジュールを明示
2002年度に実施すべき施策
- 公的医療保険で賄う医療費(特に高齢者医療費)の守備範囲の見直し
- 医療費(特に高齢者医療費)の適正化に向けたタイムスケジュールの策定
- 段階的な公費負担割合の引上げと老人保健拠出金の引下げ
(2002年度に公費投入割合を5割に引上げ、老人保健拠出金に一定の歯止め)
- 公的医療保険で賄う医療費(特に高齢者医療費)の守備範囲の見直し
- 医療費(特に高齢者医療費)の適正化に向けたタイムスケジュールの策定
- 高齢者医療費の適正化に向けた具体的施策の推進
- 保険者機能強化に向けたアクション・プランの策定
- 診療報酬体系の包括化、医療行為の標準化
- 薬価制度の見直し
- 医療情報提供の充実
- 医療のIT化促進
- 医療分野における競争原理の一層の導入
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