貿易投資委員会(委員長 槙原 稔副会長)/7月10日
貿易投資委員会は、総合政策部会で検討してきた、提言「WTO新ラウンド交渉立ち上げにあたっての基本的立場」(案)(6頁参照)の審議を行った。当日は、同審議に先立ち、外務省の野上義二外務審議官より、WTO新ラウンド交渉に向けた最近の状況等をきくとともに懇談した。
本年11月にドーハで開催されるWTO閣僚会議において、おそらく新ラウンド交渉は立ち上がることになるだろう。
他方、新ラウンドで取り上げられることになるアジェンダとしては、日本やEUが求めている、アンチダンピング協定の見直し、投資ルールの策定、貿易と競争政策、貿易と環境等を含んだ幅広いものより、範囲がかなり狭くなる可能性が高い。
その主な理由は、
途上国の多くは、ウルグアイラウンド合意が自分達には利益を及ぼさなかったとして、実施問題を強く主張している。
具体的には、先進国による繊維製品や農産品の市場の一層の開放、途上国の国内事情に十分に配慮した特別で異なる待遇の保証等である。
しかし、日米欧加の四極の間でも、見解に開きがあるため、なかなか途上国が納得するようなパッケージを打ち出せていない。
米国では、上院が民主党主導になったため、議会としては、アンチダンピングやセーフガード等の貿易救済措置については新ラウンドで絶対に取り上げないよう行政府に働き掛けている。
米国行政府は、議会から通商交渉権限(いわゆるファスト・トラック)を得るため、議会に対してかなり妥協をせざるを得ない。この結果、米国政府は、明確にスタンスを打ち出せておらず、範囲の狭いラウンドでも構わないと考えているようである。
7月末に、ドーハ閣僚会議に向けた現状を精査するリアリティ・チェック会合を開催する。その後、非公式閣僚会議が開催される可能性もある。
9月には、ドーハ閣僚宣言のたたき台をめぐる議論が始まるだろう。