経団連くりっぷ No.162 (2002年1月10日)

情報通信委員会(委員長 岸 曉氏)/12月14日

ITによって国民生活の向上を目指す


自民党では、「e−Japan重点計画特命委員会」を設け、国民に身近な電子政府の実現、経済効果のある規制改革等、e-Japan重点計画の一層の充実に向けた取組みを積極的に展開している。そこで、情報通信委員会では、自民党経済産業部会長で特命委員会事務局長の伊藤達也衆議院議員を招き、委員会の活動状況と今後の方針等についてきいた。なお、当日は「IT革命推進に向けた情報通信法制の再構築に関する第二次提言」(案)が審議、了承された(6頁参照)。

○ 伊藤達也衆議院議員説明要旨

  1. はじめに
  2. ITという道具を使って生活を向上させたい、国民がわくわくするような社会をつくりたい、という問題意識に立って、世界に負けないIT国家の構築に取り組んでいる。政治は、日本のIT政策が遅れていることを認識すべきである。日本には潜在力があるので、行政の関与のあり方を見直し、徹底した規制緩和を行うなど、総合的な政策の体系を確立すれば、IT立国を実現できるはずである。しっかりとした政策を打ち出していきたい。

  3. 自民党e−Japan重点計画特命委員会の活動状況
  4. 「緊急申入れ」(2001年11月1日)のとりまとめ

    特命委員会は、縦割りの部会の枠を超えて、課題に横断的に対応できるようになっている。秋口以降は、委員長である麻生政調会長の下、ほぼ毎週会合を開催して、1回ごとに結論を出すという形で議論を進め、11月には、それまでの結論を「緊急申入れ」としてとりまとめ、総理に建議した。

    1. IT関係予算
      申入れの第1点は、政府のIT関係予算の厳正な査定である。ITという化粧を施すと何にでも予算がつく傾向があるが、ITにかこつけた悪乗り予算、重複する予算を政治主導で排除していかなければ、IT革命は推進できない。そこで、特命委員会として10億円以上のプロジェクト全てについて、重複がないか、国民の利便性は向上するのか、システムの互換性はあるのか、契約はしっかりとしたものなのかどうかを各省庁からのヒアリング等に基づき分析・精査した。また、IT関係予算の50%は、手続の電子化関連であり、セキュリティの確保や次世代をにらんだ研究開発のための予算の比率は非常に低い。最先端のIT立国となるよう、無駄を排除することにより、これらにも十分な予算を振り向けるようにした。

    2. 電子政府
      申入れの第2点は、「電子政府の本質は行政改革である」との認識に基づく業務合理化などを含めた総合的な取組みである。国民との接点となる手続の簡素化・ワンストップ化、窓口の24時間化など、単なるペーパーの電子化ではなく、仕事の改革を行うよう明確に求めている。また、バックオフィスの改革にも踏み込んでおり、会計、給与、人事等の基幹業務に関して標準化、合理化の推進を提言している。さらに、「利用者利便が最優先」、「省庁横断的な取組み」など効率の良い電子政府実現のための基本方針を打ち出し、それを実効あるものとするために、各省庁に業務改革、情報化の責任者を置くとともに、各省庁の取組みを外部から監視するための組織を整備することを求めている。
      より具体的には、電子政府に関して、個別に法改正するのではなく、各省横断の通則法案を次期通常国会に提出するよう求めている。全ての手続の電子化が原則であり、電子化できない手続について、その理由の説明を要求している。
      公共事業、非公共事業問わず、電子入札を平成15年度までに完全実施すること、ソフト・システムの安値落札を防ぐためのルールづくりについても提言した。

    3. 光ファイバーの有効利用
      申入れの第3点は、光ファイバーの有効利用である。国、自治体が所有する光ファイバーのうち、90%以上は使われていない。公共用の光ファイバーをできるだけ開放し、活用できる仕組みをつくる必要がある。また、電力会社や鉄道会社が保有する光ファイバーについても、空きがあれば、できるだけ開放してもらいたいと考えている。これにより、ダークファイバーを有効活用できる環境を整備し、バックボーン市場を活性化させていきたい。なお、WDM技術により、光ファイバー一芯で、多くの波長を飛ばせるようになっており、帯域貸し、波長貸しができるようにする必要がある。
      また、集合住宅において、過半数の決議で光ファイバーを敷設できるよう区分所有法の解釈を提示することを求めた結果、2002年早々には、これに該当する工事内容が明示されることになった。

    4. 経済効果のある規制緩和
      インフラ整備、機動的なサービス展開、新しい端末の円滑な導入という3つの視点から、経団連など民間事業者からの要望を踏まえて、30数項目の規制緩和策を盛り込んだ。バックボーンおよびラストワンマイル市場の活性化、通信・放送の融合の推進、電波の効率的利用などに向けた施策を行えば、産業全体における生産性の向上、光ファイバーの敷設に伴う設備投資、PC・サーバ等の買い替えなどで、合計約30兆円の経済効果があると試算している。

  5. 今後の活動の方向
  6. ITが不況やリストラの代名詞となっている状況から脱却すべく、しっかりした政策を打ち出し、ITで経済改革を推進していく必要がある。「官から民へ」、「中央から地方へ」を基本精神に据え、企業・個人の力を信じてIT革命を推進し、利便性を向上させたい。
    特命委員会としては、今後、コンテンツの流通、セキュリティの問題に取り組む。また、技術革新等に対応して、事業法の体系から競争政策の体系へと転換した、新しい情報通信法制を整備する必要がある。併せて、電波、放送に関する環境整備も進めていかなければならない。


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