経団連くりっぷ No.164 (2002年2月14日)

国土・住宅政策委員会土地・住宅部会(共同委員長兼部会長 田中順一郎氏)/1月17日

民間事業者の力の発揮による都市再生の推進

−都市再生本部 山本事務局次長と懇談


政府の都市再生本部では、昨年12月、「第三次都市再生プロジェクト」や「緊急に取り組むべき制度改革の方向」を決定したほか、「民間都市再生促進のための緊急措置」を公表し、特別法の制定によって時間と場所を限定した大胆な措置を講じることにしている。そこで土地・住宅部会では、都市再生本部事務局の山本次長から、都市再生本部の取組みと今後の活動について説明をきくとともに意見交換を行った。

  1. 山本次長説明要旨
  2. 都市再生本部は、2001年4月の緊急経済対策に基づき設置された。当本部の目的は、緊急経済対策の段階では、制度改革に係る議論よりもむしろプロジェクトの推進にあったが、その後の小泉内閣の発足により、構造改革の一環として都市再生を進める条件整備としての制度改革や運用改善の検討に重点が置かれることになった。
    そこで都市再生本部では、(1) 具体的なプロジェクトの促進と (2) 都市が本来有する力を発揮する方策について検討を重ねてきた。

    1. 都市再生プロジェクトの推進
    2. 具体的なプロジェクトの推進では、これまで、第一次(6月14日)、第二次(8月28日)、第三次(12月4日)と、関係省庁が総力で取り組むものについて、固有名詞を挙げて、10のプロジェクトを決定した。
      昨年12月の第三次決定では、20世紀の負の遺産の解消として、密集市街地の緊急整備(特に危険な市街地を重点地区として、今後10年間で整備等)、都市における既存ストックの活用(約300万戸の公共賃貸住宅に関するストック総合活用計画の策定等)、大都市圏における都市環境インフラの整備(河川の再生、緑の拠点整備)を推進することにした。

    3. 民間の力を最大限発揮させる方策
    4. (1)緊急に取り組むべき制度改革の方向

      8月の「民間都市開発投資促進のための緊急措置」に基づき、経団連等の民間経済団体や地方公共団体を通じ、投資規模の大きなものでかつ都市再生上の意義が高い民間都市開発プロジェクトの提出を要請したところ、合計286プロジェクト(うち民間提出205プロジェクト)が集まった。これらの民間プロジェクトを促進するため、プロジェクトに共通する課題等を抽出し、これをもとに12月に「都市再生のために緊急に取り組むべき制度改革の方向」を打ち出した。
      具体的に、民間都市開発プロジェクトを進めるにあたっての民間事業者からの要望事項としては、

      1. 手続きの長期化や期間の不明確さなど時間リスクの軽減、
      2. 地域特性に応じて民間の創意工夫を活かせる対応、
      3. 関連公共施設の整備、
      等が挙げられていた。これを踏まえ、都市再生の重要な担い手としての民間の役割に注目し、民間事業者の力の発揮による都市再生を推進する観点から、主として地方公共団体の運用改善や法改正の実施や制度を見直すこととした(具体的な内容としては別紙参照)。

      (2)民間都市再生促進のための緊急措置

      さらに、9月に発足した有識者からなる「都市再生戦略チーム」での検討を踏まえ、12月14日、「民間都市再生促進のための緊急措置」を公表し、民間事業者による都市再生を促進するため、時間と場所を限定した大胆な措置を講じるため、特別法を制定することにした。
      具体的には、緊急都市再生地域を政令で制定し、その地域を対象に、既存の都市計画を全て適用除外にする新しい都市計画制度を導入するほか、開発段階における資金調達を円滑化する観点から、民間事業者が収益施設と公共施設を一体的に整備する一定のプロジェクトを国土交通大臣が認定し、その認定プロジェクトに対して無利子貸付等の金融措置等を実施する。
      特別法の制定のほか、一般法の改正事項として、民間事業者に土地買収・集約化のための強制力を伴う権能を付与する等の措置も講じる。また、来年度予算案では、公共事業調整費として、新たに都市再生プロジェクト推進費(150億円)が盛り込まれた。

  • 経団連側から出された意見
    1. 首都圏三環状道路などの都市再生プロジェクトに対し、来年度予算や第二次予算においてどの程度重点化されたのか、数字を示してPRすべきである。

    2. 時間と場所を限定した大胆な措置など、今回の都市再生本部の決定は大変評価できる。今後は、特別措置として、金融支援のみならず税制措置も講じてほしい。

    3. 政府の経済財政諮問会議における税制抜本改革の議論に対し、都市再生本部も積極的に意見を具申する仕組みを構築してほしい。

    4. 各種の制度改革の方向性が打ち出されたことは大いに評価できる。これらの措置を地方自治体の担当者まで周知徹底すべきである。


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