経団連くりっぷ No.170 (2002年5月23日)

経団連意見書/4月16日

誰もが起業家精神を発揮できる社会へ

新産業・新事業創出に関する提言を建議


近年、ベンチャー支援制度の整備が進んでいるが、実効性などの面で改善すべき点が残されている。また、わが国の起業家精神は、国際的に見ても低いなどの評価がなされている。そこで、新産業・新事業委員会(共同委員長:出井伸之氏、高原慶一朗氏)では、誰もが起業家精神を発揮できる社会を実現するための課題について、企画部会(部会長:鳴戸道郎氏)を中心に検討を行った結果、標記提言を取りまとめ、4月16日の理事会の承認を得て、政府・与党等関係方面に建議した。以下はその概要である。

  1. なぜ今「起業家精神」の発揮か
    1. 長引く経済の低迷とデフレの進行、産業の空洞化と雇用問題の深刻化
    2. 新産業・新事業の創造を通じた安定的な経済成長の確保、雇用機会の拡大
    3. 今求められているのは、起業家精神の涵養と、その発揮を妨げている要因の除去

  2. 当面の課題(早急に対応すべき事項)
  3. (1) 政  府
      −省庁横断的な官民共同の「創業戦略会議」の設置と効率的な支援体制の整備−

    1. 起業税制の整備

      • エンジェル税制の拡充
        出資の一定割合の税額控除、出資に係る損失の一般所得との通算、繰越期間延長等
      • 欠損金の繰越期間の延長
        新規事業創出企業への特例延長
      • 研究開発促進税制の拡充
        減価償却資産・繰延資産の即時償却、研究開発費の一定割合の割増損金算入等
      • 連結納税制度の改善
        対象法人拡大の検討、子会社の過去の欠損金との相殺容認の検討、連結付加税の早期廃止
      • ストックオプション税制の拡充
        年間権利行使総額上限の引上げ等

    2. 規制改革の推進
      IT関連分野や医療・福祉など生活関連サービス分野の規制・制度の抜本的見直し、経済の活性化および高コスト構造見直しのための規制廃止・緩和等

    3. 政府調達の改善等
      入札参加に係る実績主義・規模制限の廃止、中小企業技術革新制度の拡充、PFI活用等

    (2) 地方公共団体
      −地域資源を活かした地域経済の活性化−

    1. 地域における人材ネットワークの構築
      人的・物的資源のデータベース化、アドバイス・情報提供のワンストップサービス部門の設置、経営面の専門家とベンチャー企業経営者との交流の場の設置

    2. 地域インキュベーション機能の強化
      情報提供・経営指導等のソフト面の支援機能の強化、技術・専門家を有する大学との連携強化

    3. 地域特性に合わせた新産業・新事業の推進
      公的施設の貸与等、地域経営戦略の策定、地方税の減免等

    (3) 大  学
      −高度な人材と技術を活かした地域産業振興への貢献−

    1. 大学発ベンチャー企業の創出

      • 技術、アイデアの事業化・特許の取得・企業との連携等を、教員・研究者の重要評価基準に位置付け
      • 大学の有する資源の積極活用(国公立大学の研究施設の開放等)
      • 専門家活用による産学連携のためのコーディネート機能の強化
      • 独立法人化における非公務員型の選択、知的財産権の大学への帰属

    2. 起業家教育の拡充

      • 起業を目指す社会人、学生、教員に対する起業家教育の拡充
      • ベンチャー企業等に関する公開講座の開設等
      • 技術系学生に対する経営・ビジネス教育の拡充
      • ビジネス教育における企業経営者等の活用

    (4) 大企業
      −豊富な経営資源を活かしたチャレンジ−

    1. 革新的企業風土の醸成
      経営者のリーダーシップ、努力が報われ失敗しても再挑戦できる人事・評価システムの確立

    2. コーポレートベンチャーの推進
      社内サポートセクションの設置、ベンチャー企業教育の実施

    3. 独立ベンチャー企業との連携
      組織の活性化効果、サポート機能の充実

  4. 中長期的な課題(起業家が生まれる風土、気風の醸成)
  5. (1) 起業家に必要な資質の涵養

    自立性、独創性、決断力の涵養および職業体験やビジネスの仕組みに関する学習等のカリキュラム

    (2) 教育界と産業界の連携強化

    教育関係者と産業界との交流機会等の拡充、インターンシップ制度の推進

  6. 経団連の役割
  7. ベンチャー企業経営者と経団連会員企業経営者が交流する「起業家協議会(仮称)」の設置


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