月刊keidanren 1997年 3月号 巻頭言

これからの国際社会における日本の責任

古川副会長

古川昌彦
経団連副会長


 最近の国連やOECDなど、多くの国際機関が発表する各国経済見通しをみて、気になる点は、日本が今や、世界経済全体のブレーキ役になってしまっていることである。かつて70年代には、世界経済の機関車論が説かれ、世界経済のリード役を担った日本経済のこの衰退ぶりはどうしたことであろうか。

 確かに、わが国の急激な高齢社会への移行、円高やバブル経済崩壊の後遺症などといった、90年代に入って目立ってきた一連の成熟化現象は、経済停滞の背景にある主旋律である。

 しかし、さらに根本的な原因として、わが国の経済社会システムそのものが、新しい国際環境に対して不適合症状を起こしている点に求められよう。われわれ自身のシステムによる戦後の成功体験の記憶が強すぎるため、このシステムからの転換は容易ではないが、世界的なグローバル化、情報革命、大競争の時代、という流れに沿って、われわれ自身のパラダイムそのものを転換する必要がある。日本の近代史には、成功が後の失敗を招いた事例の枚挙に遑がない。その轍を踏まないためにも、国民の選択と決断が求められている。

 橋本総理は、2001年までの中期的な政策の柱に、行政改革、経済構造改革、金融システム改革、社会保障改革、財政改革および教育改革を「6大改革」として掲げておられる。われわれは、昨年、経団連として2020年ビジョン「魅力ある日本の創造」を提言したが、このビジョンの求める課題は、総理の説く「6大改革」と正に符節を一にするものであり、しかも、これら改革のそれぞれが、相互に密接に関連したテーマで、政官民の役割分担と協力なしには達成できないものである。

 21世紀の日本を再建するためには、過去の成功体験の軛を脱し、システム改革の痛みを乗り越えて、国際社会における自らの責任を果たしうる立場を一日も早く回復することだと思う。

(ふるかわ まさひこ)


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