月刊 keidanren 1998年 1月号 巻頭言

改革の加速と信頼の確立

豊田会長

豊田章一郎
経団連会長


新年おめでとうございます。

昨年は、96年に策定した経団連ビジョンを実行に移す年とするため、様々な構造改革の実現に取り組みました。とりわけ、規制の撤廃・緩和については、これを経済構造改革の基本と位置づけ、行政改革委員会と連携して、政府に対し精力的に働きかけてまいりました。規制緩和の日本経済に与える効果は、経済企画庁の試算などに見られるように、きわめて大きなものであります。本年は規制緩和はもちろん、法人課税負担の引下げ実現など、改革をさらに加速させ、減速感の強まっている経済を活性化させなければなりません。

規制緩和をはじめとする構造改革に伴い、企業は、より徹底した自己責任原則と厳しい企業倫理が求められることになり、かつ、活動のグローバル化に伴って、国際的に通用する行動規範の実践がますます重要となります。

企業活動の基本的目的は、社会に有用なモノ・サービスを提供することですが、その大前提として、企業は、法律、ルールを遵守し、消費者や国民各層から「信頼」を得なければなりません。

そうした意味で、昨年、企業の不祥事が相次いだことは誠に残念であります。年頭にあたりわれわれは、自己責任原則と厳しい企業倫理の徹底という原点を今一度見つめ直し、日々の実践によって社会の信頼を回復しなければなりません。

もちろん、「信頼」は企業にとってのみならず、日本経済全体、とりわけ金融シンテムにとって重要なキーワードです。不良債権処理の遅れと一部金融機関の破綻によって、ゆらぎかけた日本の金融システムの安定化を図ることが、喫緊の課題であります。

21世紀の活力ある経済社会の実現に向けた日本の構造改革は、「信頼の確立」がその一歩であると思います。

(とよだ しょういちろう)


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