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経営タイムス No.2654 (2002年11月21日)

「第2回産学官連携サミット」開く

−組織的取り組みの必要性を確認


日本経団連と内閣府、日本学術会議は18日、東京・千代田区の赤坂プリンスホテルで「第2回産学官連携サミット」を開いた。企業や大学、政府、研究機関、地方自治体などから1000人を超すトップが参加し、尾身幸次・自民党科学技術創造立国・情報通信研究開発推進調査会会長の基調講演やパネル討論、意見交換などを通じて、産学官連携に組織的に取り組む必要性を確認、研究開発型ベンチャー創出への集中的支援など重点的に取り組むべき9項目を盛り込んだ共同宣言を採択した。

冒頭、主催者を代表して細田博之・科学技術政策担当大臣、奥田碩・日本経団連会長、吉川弘之・日本学術会議会長がそれぞれあいさつした。

細田大臣は官の側から、政府が現在、科学技術の振興に必要な施策を進めていることを報告。産を代表して奥田日本経団連会長が、サミット2年目のいま、産学官連携の機運が高まっていることから、「この機運を確実な軌道に乗せることが大事」と指摘。さらに、「企業は事業の選択と集中を進める中でニーズを発信するとともに新しいシーズを積極的に探り、一方、大学や研究者は社会のニーズを意識し、開発や人材育成に努めるべき」と述べた。

また、学を代表して吉川日本学術会議会長は、学が社会から独立する中で、社会に貢献しなければならないことや、産学官の連携で新たなシナリオを作らなければならないことなどを訴えた。

あいさつに続いて、尾身幸次氏が、産学官連携の理念と戦略をテーマに基調講演に立ち、日本経済再生のため産学官の力を結集する必要性を強調。科学技術の力で「強い日本」を創るための戦略として、(1)基礎研究の推進 (2)科学技術の戦略的重点化 (3)研究開発型ベンチャー創出の促進――など10項目を、予算措置案も含めて具体的に提示した。

特別講演では、ノーベル化学賞受賞が決まった田中耕一・島津製作所フェローが登壇。自身の失敗から生まれた大きな成果などについて説明するとともに、国内に埋もれている多くの研究や技術に、発表の場や公正な評価を与えることが必要であることなどを訴えた。

パネルディスカッション「トップが語る産学官連携戦略」では、産学官連携の先進国である米国からもパネリストを迎え、大学、企業、地方自治体が、それぞれの取り組みや成功事例についてプレゼンテーションを行った。
パネリストは、以下の方々。

大学側
安西祐一郎・慶應義塾大学塾長
佐々木毅・東京大学総長
レロイ・フッド・システムズ生物学研究所社長
(前カリフォルニア工科大学教授、前ワシントン大学教授)
企業側
伊藤源嗣・石川島播磨重工業社長
晝馬輝夫・浜松ホトニクス社長
吉野浩行・本田技研工業社長
トーマス・コネリー・米国デュポン社上席副社長
地方自治体
太田房江・大阪府知事
マイケル・イーズリー・米国ノースカロライナ州知事

プレゼンテーションでは、学側のレロイ・フッド氏が自身の経験から、産学官連携の核として「イノベーション、ビジョン、リーダーシップ」の3つを提示。伝統的な官僚主義をいかに乗り越えるかが課題であると指摘した。
また、企業側のトーマス・コネリー氏は、時代の変化に対応した連携を図らなければならないことを示唆、成功要因として「共通の目的」「パートナー選び」などを挙げた。
州知事のマイケル・イーズリー氏は、1950年代にスタートしたノースカロライナ州の産学官連携の取り組みによって、「高い生活水準と低い失業率」を達成し、今後も多くの雇用創出・雇用拡大の可能性があることを紹介した。
プレゼンテーションを受けて行われた意見交換では、フロアから多くの意見や質問があがり、産学官連携に対する関心の高さが明らかになった。

サミットでは、パネルディスカッションで紹介された産学官の事例や米国の成功事例、積極的な意見などをもとに、今後、産学官連携において重点的に取り組むべき事項を共同宣言に集約、参加者全員の一致を得て採択した。


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