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経営タイムス No.2660 (2003年1月23日)

日本経団連「厚労省試案」で見解

−医療制度抜本改革へ基本的な考え方示す


日本経団連は14日に開かれた会長・副会長会議ならびに社会保障委員会(委員長=西室泰三・東芝会長、共同委員長=福澤武・三菱地所会長)で、「医療制度の抜本改革に関する基本的考え方と『厚生労働省試案』に関する見解」を了承した。
同見解は、2002年7月成立の改正健康保険法・附則に盛り込まれた (1)保険者の再編・統合を含む医療保険制度の体系のあり方 (2)新しい高齢者医療制度の創設 (3)診療報酬の体系の見直し――の3項目について、03年3月末までに「基本方針」を策定することに対し、社会保障委員会・医療改革部会(部会長=森昭彦・ミレアホールディングス副社長)が中心となって、02年9月から検討してきたもの。医療制度の抜本改革の必要性を主張した上で、同年12月に厚生労働省が公表した改革試案について、安易な保険者間の財政調整により制度維持を図ることに反対するとともに、65歳以上を対象とした独立した高齢者医療制度の創設、保険者機能の強化などを求めている。
1月17日には坂口力厚生労働大臣との意見交換に、日本経団連から森部会長、矢野弘典専務理事が同見解をもって出席した。
見解の概要は次の通り。

1.抜本改革の基本的考え方

改革により、経済活力を損なわず長期的に持続可能な制度を構築し、国民の安心を確保する。情報開示を徹底し、公的医療保険制度の守備範囲の見直し、老人保健拠出金の廃止と独立方式による新高齢者医療制度の創設、保険者機能の発揮による「選択」と「競争」の促進などに取り組む。

2.抜本改革に向けての保険者機能のあり方

医療サービスの「質の向上」「コストの適正化」を図るため、保険者・被保険者等にインセンティブの働く仕組みが求められる。とくに保険者は、医療機関へのチェック機能や被保険者の健康管理を行うなど、効率化を進める推進力となる。健保組合は、事業主とともに従業員等の健康管理を行い生産性向上を図るという重要な役割を持つ。

3.「厚生労働省試案」について

 (1)基本的な評価
改革に関する基本理念や医療費の抑制に向けた抜本改革の具体的な施策がない。とくに、保険者機能の発揮に資するインセンティブを伴う具体策が示されていない。

 (2)保険者の再編、統合について
被用者保険と国保は制度が根本的に異なるため、財政調整は行うべきではない。安易な再編・統合・財政調整は、健保組合の自主・自立・自己責任に基づく運営を阻害し、保険者機能を縮減させる。

 (3)高齢者医療制度の創設について
A案(制度を通じた年齢構成や所得に着目した財政調整)は、財政調整によって制度の維持を図るもので賛成できない。
B案(75歳以上の後期高齢者に着目した保険制度の創設)は、独立方式の考え方は評価できるものの、後期高齢者のみが対象で、また、現役世代からの財政支援等は現行拠出金制度と変わらず、抜本改革とは言い難い。
新たに、65歳以上を対象とする「シニア医療制度」を創設すべきである。財源は負担能力と受益に見合う高齢者負担のほか、国民全体で支える消費税等が望ましい。老人保健拠出金制度は廃止し、退職者医療制度も「シニア医療制度」創設に伴って縮減・廃止する。

 (4)診療報酬体系のあり方について
医療機関の機能や患者の病態等に応じた「分かり易い診療報酬体系」を導入する。入院医療の包括払いは評価できるが、外来医療では出来高払い制が基本となっている。医療の標準化を進め、定額化・包括化を徹底する。

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