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経営タイムス No.2675 (2003年5月15日)

日タイ経済連携協定の早期交渉開始を

−日本経団連が意見書を発表


日本経団連は12日、「日タイ経済連携協定の早期交渉開始を求める」と題する意見書を発表した。同意見書は日本経団連のアジア・大洋州地域委員会が日タイ貿易投資委員会や貿易投資委員会と連携を図ってとりまとめたもの。日本企業が中国への関心を高める中で、もう一つの軸としてのASEANの役割を見直し、特にASEANにおける最大投資先であるタイとの経済連携を進めるべきとの考え方を強く打ち出している。同意見書の概要は次のとおり。

1.ASEANとの包括的経済連携のためタイとの交渉を推進する

日本経団連では、今年1月に発表した新ビジョンの中で、東アジア自由経済圏の構築を提唱している。また、小泉首相が昨年1月に提案した日・ASEAN包括的経済連携構想についても、早期具体化を求めている。
こうした構想を実現していくためには、日本企業にとって特にプライオリティの高いタイとの2国間交渉を早期に進める必要がある。

2.日タイ経済連携協定の交渉を開始する

ASEANには、日本企業にとって過去40年にわたる人材の厚みや幅広い産業集積がある。わが国にとってタイは、ASEANにおける生産および販売活動の拠点としての重要性が一層増しつつある。

中国経済の影響力が増大する中、わが国企業としては中国とASEANとの直接投資のバランスを取りつつ、タイを含むASEAN諸国における最適地生産を追求している。タイの事業環境を早急に改善しなければ、対中投資の誘因が増し、結果として、東アジアにおける共存共栄は難しくなり、日本企業の事業環境も厳しくなる。

日系企業は、グローバル市場においては、自社グループ内の企業も含めて中国を拠点とする企業との競争に直面していると同時に、タイに進出している他国の企業との競争にも直面している。特に米国は、タイ米修好経済関係条約で投資に関する内国民待遇を認められており、すでに日系企業は米系企業に比べて不利な状態にある。加えて中国は、タイを含むASEANとの経済連携に向けた協議を進めており、この面でも、日本企業がさらに不利な状況に陥るおそれがある。

現在タイは、日本との経済連携を強化しようという機運が強い。この機を捉えて、すでに昨年5月から進めてきた日タイ経済連携の予備協議および作業部会における成果を活かし、できるだけ早く交渉に入るべきである。まずは6月開催予定の日タイ首脳会談において交渉入りが合意されることを期待する。

交渉の難航が予想される農産物の関税引き下げについては、農業構造改革による競争力強化で対応すべきであり、農業政策のあり方を検討すべきである。交渉の結果、コメなどのセンシティブ品目を例外とする、あるいは実施時期を遅らせるなどの配慮も必要となろうが、その場合でも、GATT(関税と貿易に関する一般協定)およびGATS(サービスの貿易に関する一般協定)の関連条文を満たす必要がある。
また、タイ側にも解決すべき問題は多い。タイに対しては、関税撤廃はもとより、サービス・投資分野の自由化および貿易円滑化の具体策を強く求めるべきである。

3.タイとの経済連携を重層的通商政策の一環に位置づける

日本経団連は、わが国と深い経済関係にあるタイと経済連携協定を早期に結び、その成果を他のASEAN諸国との経済連携強化に活かすことが、ASEANとの包括的経済連携、ひいては東アジア自由経済圏の構築にとって重要と考える。
日本経団連としては、マルチ、バイ、リージョナルなどの重層的通商政策の重要性を主張している。わが国政府は、タイとの経済連携協定の交渉を、韓国やメキシコとの2国間協議と並行して積極的に推進すべきである。


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