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経営タイムス No.2709 (2004年2月12日)

日本経団連・奥田会長、春季労使交渉で共同インタビュー

−「春討」の方向性示唆/「政府への要望、社会制度のあり方を労使で検討」

−ホワイトカラーの成果主義評価/「国際競争力」でも見解


日本経団連の奥田碩会長は9日、東京・大手町の経団連会館で、今年の春季労使交渉について共同インタビューを行った。この中で奥田会長は、賃金だけではなく、政府への要望や今後の社会制度のあり方などについて労使で検討することが、これからの「春討」であると主張。さらに奥田会長は、成果主義におけるホワイトカラーの評価は、その成果が数値化しにくいことから、数値化できないものも含めて総合的に行うべきとの見解を示した。共同インタビューの主な質疑応答は次のとおり。

――これからの春季労使交渉をどのようにお考えか

奥田会長 これからの春季交渉は、経営側と組合側がお互い議論を叩き合い、「従業員プラス経営者」が共同して、政府への要望やこれからの社会制度のあり方などについて検討することが非常に大事だ。そういうことを労使で考えることが、これからの「春討」だと思う。

――今年の経営労働政策委員会報告(経労委報告)で「定期昇給の廃止やベースダウンも労使交渉の対象となり得る」と明記したことに対して、連合が批難をしているが

奥田会長 一律にベースダウンしろとは言っていない。そういう会社も出てくるかもしれないと言っているだけだ。

――マクロでみると、賃上げの抑制が個人消費に悪影響を与えるのではないか

奥田会長 ベースアップがなくても、定期昇給によって毎年上がるわけで、個人での増減はあるものの、総額人件費に大きな変化はない。マクロ的にはあまり影響はないと思う。

――経労委報告では成果主義賃金への転換を打ち出しているが、成果主義賃金を見直す動きも実際には出ている

点数以外に総合的な判断を

奥田会長 営業などは成果がわかりやすいが、一般的なホワイトカラーは成果を評価するのが難しい。仕事を的確に早くこなすなど、点数で表せないものを総合的に勘案して評価すべきだ。評価が数字で表せないので、評価する人によって評価が異なるだろうから、場合によっては会社や人事が評価を修正する必要がある。

――中小企業の賃上げを重視するとの連合の方針についてどう思うか

奥田会長 大きい企業と小さな企業は違うし、中小企業の中でも、儲かっている会社とそうではない会社がある。横並びでなければならないということはない。

――経労委報告では、国際競争力強化の必要性を指摘しているが、現状の国際競争力をどう感じているか

奥田会長 国際競争力の強い産業と弱い産業がある。国際競争力の強い会社はより強く、弱い企業は強くする努力が必要だが、競争力がない会社は市場から退出せざるを得ない。それが民主主義経済の鉄則だが、市場から撤退せざるを得ない会社の従業員には、セーフティーネットをきちんと張っておくことが大事だ。

――終身雇用については、どのようにお考えか

奥田会長 私自身は長期雇用には肯定的である。同じ会社に長くいるほど、会社への忠誠心も出るだろうし、技術や技能も高まる。それが一番よいと思う。

――サービス残業の撲滅に向けた経営側の取り組みは

奥田会長 職務に完全にフィットした人員構成にすることが大事なことである。サービス残業はあってはならないこと。残業したら、その対価をきちんと払うべきだ。

――会長が先日言っていた家計の見直しについて、連合は「もうやっている」と言っているが

奥田会長 私が言ったのは、ただ家計簿をつけるだけではなく、家計簿をつけた上で、他の国と比べて、なぜ日本はこの項目が高いのかということを考えて、そこから見えてくる制度問題にまで思いを馳せてほしいということだ。こうした制度問題について話し合うのが、これからの労使交渉だと思う。


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