日本経団連タイムス No.2755 (2005年2月10日)

教育問題委員会、中山文科相と意見交換

−教育改革断行へ決意表明/中山文科相、日本経団連の「提言」を評価


日本経団連(奥田碩会長)は2日、都内のホテルで教育問題委員会(草刈隆郎委員長)を開催し、中山成彬文部科学大臣との懇談を行った。この日の委員会では、日本経団連が1月18日にとりまとめた「これからの教育の方向性に関する提言」1月27日号既報)の趣旨を説明、文部科学行政に反映するよう要望したほか、今後の教育のあり方についての文科省の考え方を聞き、意見交換を行った。

日本経団連、倫理教育の充実などを要望

中山文科相は冒頭あいさつの中で、日本経団連がとりまとめた「21世紀を生き抜く次世代育成のための提言」2004年4月29日号既報)と「これからの教育の方向性に関する提言」について、「まさにわが意を得た内容となっている」と評価、日本経団連の教育に関する問題意識や改革の方向性は、中山文科相の考えとほぼ一致していると述べた。
その上で、現在は「知の大競争時代」にあり、日本が国際競争力を維持し、国家としての活力や品格を持ち続けるには、一目置かれる人材を輩出する必要があることを指摘、「そのために、教育改革に必死に取り組む所存である」との決意を語った。
また、中山文科相は昨年11月に公表した、教育改革の方針などを示した『甦れ、日本!』という私案についても言及し、(1)社会や教育をめぐる環境変化に合わせて教育基本法を改正する (2)学力向上のために教員の質の向上を図るとともに、全国学力テストを実施する (3)教員の質向上のために教員免許の更新制を導入する一方、専門職大学院を設立する (4)各都道府県が特色のある教育を実践できるように義務教育費の国庫負担制度を改革する――などの点を主張したことを説明した。
さらに中山文科相は、子どもたちの勉強時間が最近減っていることについては、「授業や勉強が楽しく、感動できるように、教科書の中身に工夫を凝らし、知的好奇心を刺激するものに変えていきたい」との考えを述べるとともに、「ぐずぐずしていると間に合わない」との危機感を示し、スピード感をもって改革に取り組みたいとの意向を明らかにした。

■産業界への要望

また、中山文科相は産業界に対して、(1)産業界も大学との連携に積極的に取り組んでほしい (2)企業は(子どもに)有害なテレビ番組のスポンサーとなることを自粛してほしい (3)経済状況は依然として厳しいが、高校・大学等の新卒者の採用拡大に努力してほしい (4)産業界も幼児期の教育に関心を持ってほしい――などの点を要請した。

■意見交換

続いて行われた意見交換では、日本経団連から、(1)倫理教育の充実 (2)学校や教員の評価制度の充実 (3)大学院入学資格の弾力化 (4)バウチャー制の導入 (5)キャリア教育の充実 (6)幼児教育の重要性とその社会的認識の向上――などを文科省に要望する意見が出された。これに対し、塩谷立副大臣は、(1)道徳や倫理は重要であり、学校でも実施しているが、「公共心」の涵養などは家庭でのしつけが基本である (2)評価制度を充実すべく、いろいろと試行している (3)大学院の入学資格のあり方については、今後検討したい (4)中学を卒業するころには、子どもたちが将来どんな職業に就きたいかが明確になるように、進学や就職に関する教育・指導を充実させていきたい――などと応じた。
最後に、日本経団連と文科省は、教育改革の具体的な方策などについて、改めて懇談の機会を持つことで合意した。

【社会本部人材育成担当】
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