日本経団連タイムス No.2756 (2005年2月17日)

「地球温暖化防止に取り組む産業界の決意」表明

−意見書を発表


日本経団連(奥田碩会長)は15日、「地球温暖化防止に取り組む産業界の決意」と題する意見書を発表、政府・与党に建議した。同意見書は16日の京都議定書発効に先立ち、産業界としての地球温暖化防止対策のさらなる強化について、あらためて具体策を示すとともに、政府が策定する京都議定書目標達成計画への要望をとりまとめたもの。同意見書について記者会見を行った、環境安全委員会の山本一元共同委員長は、産業部門のCO2削減対策は経団連環境自主行動計画の確実な達成などによって着実に進んでいるものの、民生・運輸部門が排出するCO2は増加傾向にあり、京都議定書の目標達成は決して容易でないと指摘。その上で、「産業界として、地球温暖化問題に今まで以上に積極的に取り組む」との強い決意を示した。さらに山本共同委員長は、政府の策定する目標達成計画は、国民や企業の自主性による創意工夫を引き出し、環境と経済の両立を図れるものとする必要があると訴えた。同意見書の概要は、次のとおり。

対策強化へ具体策提示/京都議定書目標達成計画へ要望

I.産業界による具体的な温暖化対策の強化

1.環境自主行動計画の信頼性・透明性の向上
  1. 産業界は、今後も自主行動計画に基づき、省エネや原・燃料転換などの取り組みを強化し、全体としての統一目標を確実に達成していく。

  2. 海外プロジェクトの推進や内外炭素基金への出資など、京都メカニズムに対する自主的取り組みを促進する。

  3. 第三者評価委員会の評価を踏まえて自主行動計画の結果の開示内容を継続的に見直し、その透明性と信頼性のさらなる向上を図る。

  4. 産業部門のみならず、民生部門や運輸部門における参加業界・企業の拡大を働きかける。

2.民生・運輸部門などにおけるCO2排出抑制への取り組みの強化

行政や自治体、労働組合、NGOなどと産業界の連携・協力によって、次の1.〜5.への取り組みを推進する。

  1. トップランナー方式拡大への対応や製品・サービスの充実、環境情報の提供などに努め、省エネ製品・サービスの開発・普及を強化する。

  2. 既存の取り組み事例・経験の共有や取り組みの裾野の拡大によって、民生・運輸部門の排出削減努力の横展開を図る。

  3. 物流における荷主と物流事業者の連携など、異業種間連携を推進し、物流を効率化する。

  4. 個人・家庭の省エネ行動の支援や通勤時の公共交通利用促進など、従業員の取り組みを支援する。

  5. 自社保有林の整備や間伐材などの国産材活用、バイオマス燃料(生物資源を発酵させ取り出したアルコールと、ガソリンを混ぜてつくった燃料)の利用促進などによって森林を整備する。

3.積極的な環境情報の公開

2004年1月に発表した会員企業の環境報告書等を3年で倍増する計画の実現など、情報提供を充実し、ステークホルダーとの対話を推進する。

II.京都議定書目標達成計画策定への要望

1.環境と経済の両立等を前提とした目標達成計画の策定

産業界への過大な負担の押し付けや、環境と経済の両立への配慮を欠いた政策には反対する。
費用対効果に優れた施策を採用するとともに、PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを通じて対策の実効性を検証し、確実な目標達成を図るべきである。

2.鍵を握る国民運動
  1. 目標達成に向けた第2ステップ(05〜07年)の中核は国民運動である。環境調和型の新しい価値観・社会観の創造に向けた個人の意識改革や、世界最先端の技術と国民運動の有機的結合による家庭部門のCO2削減の推進が必要である。

  2. サマータイムは、直接的な効果が期待されるほか、国民が温暖化問題をより身近に考える機会となるため、その早期実現が望まれる。

  3. 国・地方の公的部門における排出削減計画の着実な実施など、まずは政府による率先垂範が重要である。

3.経団連環境自主行動計画の位置づけ

1997年に策定した環境自主行動計画は着実に成果を上げており、政府はこれを統制すべきではない。政府との協定化や、業種別目標の目標達成計画への記載に強く反対する。

4.原子力の有効活用および新エネルギーの普及

温暖化対策の切り札である原子力への国民各層の理解と着実な推進が不可欠である。あわせて風力やバイオマス、太陽光発電など新エネルギーの開発・普及も重要な課題である。

5.京都メカニズムの積極的活用

政府は京都メカニズムを現行の地球温暖化対策推進大綱が想定している1.6%分に限定せず、積極的かつ柔軟に活用すべきである。また、京都メカニズムを環境外交の1つの柱とすべきである。

6.環境税や国内排出量取引制度などの経済統制的、規制的な対策には強く反対

国民や企業の自主的な取り組みを促す施策を温暖化対策の中心とすべきである。政府は個人や企業の自由な活動を阻害する管理型の施策を取るべきではない。

III.おわりに

環境と経済の両立には、責任ある自主的な取り組みと新技術の開発・普及が不可欠である。経済を犠牲としない温暖化対策の日本モデルを構築し、世界に発信していくことが、真の「環境立国」の実現につながる。

【環境・技術本部環境担当】
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