日本経団連タイムス No.2778 (2005年8月4日)

流通委、サプライチェーンマネジメント構築へのソリューションで日本NCRの説明聴取

−企画部会がとりまとめ/中間報告の概要説明も


日本経団連の流通委員会(平井克彦委員長)は7月15日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。会合では、日本NCRテラデータ事業本部流通ソリューション事業部の権並信宏シニア・コンサルタントから「リテイル・サプライチェーン・ソリューションと事例のご紹介」と題した説明を聴取し、意見交換を行ったほか、同委員会企画部会がとりまとめた「中間報告〜最適SCM構築を目指した各社の取組み〜」の概要について西山茂樹部会長が報告した。

権並氏はまず、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の歴史や進化について解説するとともに、米国でのリテイルSCMの発展過程について語り、データ・ウェアハウスの重要性を強調した。また、SCMには「企業内の情報の一元管理と全体の可視化が欠かせない」が、従来型のシステムでは部門ごとの管理しかできないとの問題点を指摘し、同社が開発した「 Terdata 」というデータウェアハウジング専用のデータベースの有効性について説明。その機能として、(1)在庫などを可視化することで、計画と実績の差異分析および優先課題の解決にも役立つこと (2)貢献度分析や商品プロファイル分析などについて、取引先と情報共有することでCPFR( Collaborative Planning Forecasting and Replenishment )が実現できることなどを挙げるとともに、日米で成果を上げたソリューション活用事例を報告した。

日本企業の事例では、「良品計画」を紹介。2000年に需要予測システムを導入した同社では、04年の在庫高が01年に比べて約20%低減したほか、04年にはシステムを拡張し、販売情報や需要予測情報を取引先と共有することで、最適な生産計画をめざすこととなったことなどを説明した。その上で権並氏は、再成長期にある同社の成功には、データ・ウェアハウスを中心とした情報系の構築によって、分析や計画、全体最適化の改善・推進が可能になったことが大きいとの見方を示した。

続いて、西山部会長が同委員会企画部会がとりまとめた中間報告の概要について説明を行った。同委員会では、03年10月に「商流・物流システムの効率化に関する提言」2003年11月6日既報)を発表し、産業競争力を高めるには高コスト構造是正が不可欠と指摘した上で、物流コスト削減等には、企業間連携に基づく最適サプライチェーンの構築が重要と訴えている。今回の報告は、同提言の具体化に向け、部会メンバー企業を中心にSCM構築の取り組みや課題について事例研究の形で整理したもの。西山部会長は同中間報告について、「会員企業の参考資料に供するとともに、事例から得られる示唆などを整理し、今後新たな検討につなげたい」と述べた。

◇ ◇ ◇

同中間報告では、同委員会でヒアリングした最適なSCM構築をめざした各社の取り組み状況を横断的に整理し、(1)多重多段階の流通構造の見直し、企業間協働によるビジネスモデルの再構築 (2)ロジスティクスやオペレーションの改革 (3)IT等を活用したBPR、ビジネスの活性化、生産性向上 (4)コスト構造の明確化によるコスト削減、新たな販売戦略の構築 (5)物流網の再構築 (6)環境問題への取り組み (7)トップダウンによるシステムの構築――の7つに分類化。また、(1)電子商取引などに対応した、ITインフラの整備や標準化の促進 (2)海外に生産拠点をおく場合を考えたグローバルなSCMの構築 (3)環境に配慮した物流の実現 (4)循環型社会の実現 (5)トップダウンによる取り組み――などが最適なサプライチェーンの実現に向けた課題であるとしている。

【産業本部行革担当】
Copyright © Nippon Keidanren