日本経団連タイムス No.2784 (2005年9月22日)

「WTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議の成功を望む」発表

−全加盟国の政治的決断を求める


日本経団連は20日、WTO(世界貿易機関)の新ラウンド交渉の推進を求める「WTO新ラウンド交渉・香港閣僚会議の成功を望む」を取りまとめ、発表した。新ラウンド交渉は、年末の香港閣僚会議で大枠合意に至らなければ、2006年に予定する交渉終結が困難となる状況にあるが、いまだ各国の意見が収れんせず、7月末の香港合意「たたき台」の作成が失敗に終わるなど、交渉は難航を極めている。各国の経済界が危機感を強める中、日本経団連では同提言において、WTOの意義を再確認するとともに、全加盟国が一致し、実質的な自由化進展に寄与する政治的決断を行うよう、強く求めている。なお今後、新ラウンド交渉を実質的に進展させるべく、各国の関係方面に積極的に働きかけを行っていく考えである。

提言ではまず、年末の香港閣僚会議で新ラウンド交渉の大枠合意が実現できず、06年中の交渉終結が困難となれば、WTOへの信頼と多角的交渉による自由化への支持喪失が懸念され、保護主義の台頭や国際政治の不安定化を生じかねないと憂慮を表明。欧米をはじめとした、主要国の主な経済団体は交渉の停滞への危機感を早くから共有しており、今春以降、ジュネーブ等への合同ミッション派遣や、世界6経済団体の共同声明発出(関連記事別掲)など、深刻な事態の打破に向け、連携強化を図っていると説明している。

こうした状況を踏まえ、同提言では、新ラウンド交渉成功のためには、対立する意見を収れんさせ、交渉を実質的に進展させるべく、加盟各国それぞれが今すぐに強い意思を持って政治的決断を行うべきであると主張。

先進国・新興途上国に対しては、(1)交渉の進展に向けたリーダーシップの発揮 (2)途上国の開発と交渉参加能力の向上支援や途上国の関心分野への配慮――が必要とした一方、途上国には、貿易自由化が経済発展に資するとの認識に基づく、交渉への建設的な関与を促している。さらに日本においては、WTO交渉に臨む総合的な戦略を早急に構築し、関係各省庁が一体となって臨むことが不可欠であると言及した。

また、EPA(経済連携協定)への高い関心と期待が寄せられている一方、WTOの現状に対する認識自体が薄れている傾向にあることに懸念を表明。「EPAはWTO体制の内部に位置づけられる制度である」とした上で、グローバルな自由化・ルールを実現するWTOそのものにEPAが代替することはできないことや、WTOには整備された紛争解決手続きが機能していること、また、途上国にとっても経済成長の基盤であることなどを挙げ、WTOの意義を再確認している。

その上で、改めて同提言では、多角的自由貿易体制の根幹をなすWTOへの信頼の維持と自由化実現の可能性は「香港閣僚会議における大枠合意の成否にある」と位置づけ、全加盟国に対して、実質的交渉の進展に向けた政治的決断を行うことを強く求めている。

なお、個別交渉分野とそれに対する日本経団連の主張は図のとおり。

分野別・日本経団連の主張の概略図
【国際経済本部貿易投資担当】
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