日本経団連タイムス No.2793 (2005年12月1日)

関西会員懇談会開く/「構造改革の断行と関西経済の新たな発展に向けて」テーマに

−奥田会長、自発的政治寄付拡大や企業倫理の確立を要請


日本経団連は11月17日、京都市で関西会員懇談会を開催、奥田碩会長、御手洗冨士夫副会長、三木繁光副会長、西岡喬副会長、勝俣恒久副会長、三村明夫副会長をはじめ関西地域の会員企業代表者ら約160名が出席した。今回の懇談会は「構造改革の断行と関西経済の新たな発展に向けて」を基本テーマに活発な意見交換が行われた。

開会あいさつで奥田会長は、10月末に発足した第3次小泉改造内閣に対して「新内閣への要望」を提出したこと(11月3日号既報)を報告。推進すべき当面の政策課題として、(1)効率的な行財政構造を確立する (2)民の力を引き出す競争基盤を整備する (3)イノベーションを創出し世界のトップランナーになる (4)対外経済戦略および外交・安全保障政策を推進する (5)人を活かす社会をつくる――の5項目を提起したと説明した。
また、個人や企業の自発的な政治寄付の拡大と企業倫理の確立について、関西経済界の理解と協力を求めた。

続いて行われた活動報告では、「経済法制改革をめぐる最近の動き」について御手洗副会長が、「社会保障制度改革への取り組み」について三木副会長が、「税制改正への取り組み」について勝俣副会長が、「環境問題への取り組み」について三村副会長が、それぞれ説明を行った。

地域振興などで意見交換

意見交換ではまず、京都商工会議所の村田純一会頭(村田機械会長)から、(1)京都の都市としての格を高め、街そのものをブランド化する京都ブランドの推進 (2)日本文化の継承にもつながる、国家戦略としての京都創生 (3)2008年サミットの関西誘致・首脳会合の京都開催――を主張。

次いで佐藤茂雄・京阪電気鉄道社長が、公益性ある企業の株式買い占めといった行き過ぎた市場主義は、わが国の安全や安心をゆるがしかねないとするとともに、均衡ある国土発展や住みやすく安全で安心な地域づくりを実現するためには、地方への権限委譲・国と地方の適正な税配分などが必要であることを訴えた。

矢嶋英敏・島津製作所会長は、京都は早くから産学交流が盛んで、優れた先端技術を持つ企業を輩出してきたことを実例とともに紹介。今後も産学連携の実をあげていくには、シーズは大学、ニーズは企業というパターンだけでなく、企業もシーズをもって大学にアプローチしていく姿勢が必要と述べた。また、各自治体がライフサイエンス等の分野で同様の産学官連携プロジェクトを立ち上げていることは非効率であり、各地域が役割分担を明確にして事業を進める必要があるとした。

福永喬・椿本チエイン会長は、ものづくり企業として、品質不良ゼロに懸命に努めることが、企業不祥事を未然に防ぎ、結果として企業価値を高め、企業の社会貢献をも可能にするとの考え方を示した。その上で、企業不祥事を起こさないためには、経営トップの行動に加え現場レベルの誠実さや、些細な問題でも隠さない姿勢、さらにはヘルプラインの整備が不可欠であることを強調した。

また、筧哲男・三洋化成工業会長からは、同社が、顧客のニーズに合った製品を開発し、製品開発時に生まれた技術をシーズにして別の製品開発に応用していく形(ニーシーズ指向)で技術と製品の領域を広げてきたことを紹介。グローバル競争が激化している中、企業の生き残りのためには研究開発に一層磨きをかける必要があるとして、研究開発促進税制の延長・恒久化を求めた。

これらの意見を受けて西岡副会長が「京都には街なみから食べ物、文化に至るまで世界に通用する立派なコンテンツがたくさんあり、それらを京都ブランドで統一して戦略的に展開していってはどうか」「地域を魅力あふれたものとしていく上で、新たな国土形成計画の策定に際し、関西からも、地域の個性を生かすアイデアを積極的に出していただきたい」と、また、御手洗副会長から「企業倫理を社内の隅々にまで浸透させるには、経営者自らが強い使命感を持って現場に出向き、自らの言葉でその重要性を説いていくことが必要」と指摘。勝俣副会長は「産業界としても大学との間で、研究開発面での連携にとどまらず、人材育成をも含む総合的な連携を深めていく必要がある」と述べた。

懇談会の最後に奥田会長から、(1)激化するグローバル競争を勝ち抜くには科学技術創造立国の実現が不可欠 (2)観光目的のビザ免除の適用拡大や観光を担う人材の育成、景観に対する配慮、ゾーンで捉える観光戦略などを通じ国際観光立国を推進すべき (3)京都独自の風格ある企業文化や歴史に培われた文化などを生かした京都創生は、地域の主体的取り組みとして全国の手本となる――と総括を行った。

【総務本部総務担当】
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