日本経団連タイムス No.2798 (2006年1月26日)

日本経団連労使フォーラム/産別労組リーダー講演

−「今次交渉に臨む産別方針と政策・制度要求」


日本経団連は、12、13の両日、都内ホテルで「第108回日本経団連労使フォーラム」を開催、今次春季労使交渉などにおける課題や対応策を探った(フォーラム全体と1日目の概要については前号既報)。

フォーラム2日目の産別労組リーダー講演では、自動車総連の加藤裕治会長、基幹労連の宮園哲郎中央執行委員長、UIゼンセン同盟の落合清四会長代行が、「今次交渉に臨む産別方針と政策・制度要求」について、それぞれ説明した。

業績の反映は月例賃金で【加藤氏】

―賃金制度の確立を強調

最初に自動車総連加藤会長は、自動車産業はおおむね良好といわれるものの、実態はグローバル化による国際競争力の激化を背景に、海外依存度の増加、設備投資の増加、非正規従業員の増加――など依然厳しい状況にあると、産業情勢を分析。こうした中で、好業績を上げた要因の1つは、質の高い労働にあるとした上で、「従業員のモチベーションとモラールを維持するために、業績の反映は一時金ではなく、月例賃金で行うべき」との基本的見解を示した。
雇用についても、国内で1000万台生産が可能な雇用の確保が必要との考えを明らかにした。
さらに「横並び意識から脱却し、どういう働き方をすれば将来を見渡すことができるか、単にレンジだけが決まっているような賃金制度ではなく、カーブが描けるような賃金決定がなされるべき」と、賃金制度の整備の必要性を語り、「賃金制度の確立なくして、格差の是正はない」と強調。
要求内容については、各社事情が異なることから統一要求は行わず、実質的なベースアップに相当する「賃金改善」は、各単組で主体的に決めるべきとのスタンスで、「統一した底上げ分に、各単組で格差是正分を積み上げて要求する」との方針を表明した。

可処分所得維持・向上へ【宮園氏】

―ヒトへの先行投資必要

続いて登壇した基幹労連の宮園中央執行委員長は、今次交渉の取り組みの基本的考えとして、「魅力ある労働条件づくり」と「産業・企業の競争力強化」を車の両輪ととらえ、両者の好循環の創造が不可欠とした上で、「防衛から生活向上」という労働界全体の運動基調の変化を踏まえ、「可処分所得の維持・向上」に向け、トータルで労働政策の改善をめざした政策制度要求をすると説明した。
基幹労連は2003年9月、鉄鋼労連、造船重機労連、非鉄連合が統合して誕生。06年は初めての統一要求となる極めて重要な年として位置づけている。
基幹労連傘下企業の産業情勢は、鉄鋼は過去最高益を更新するなど好調で、非鉄も原材料の高騰などで好調。造船は受注・生産時期のタイムラグの影響で依然厳しい状況にあるが、従業員の頑張りで業績が維持されているとの認識を示した上で、「魅力ある労働条件づくりには、ヒトへの投資が不可欠」とヒトへの先行投資の重要性を唱えた。
要求については、ベアなども含めた賃金改善に取り組み、具体的には、「1人当たり3000円(2年間、06年4月実施)の月例賃金の引き上げ」の統一要求を行うとし、3部門で連合、JCの方針を考慮して議論を進めている。

平均賃金の引き上げなど【落合氏】

―連合の考え方を100%踏襲

最後に、UIゼンセン同盟の落合会長代行は、6業種からなる傘下組合の状況について、その多くが定昇制度を持たない中小企業であること、パート労働者など非正規従業員を多く抱えるとした上で、06年統一賃上げ要求の柱は、(1)平均賃金引き上げ要求 (2)代表的労働者の具体的個別賃金引き上げ要求 (3)最低賃賃の協定化――の3つとし、連合の考え方を100%踏襲するとの方針を示した。
具体的な要求については、「賃金体系(カーブ)維持分に加え、1人平均+1%または2500円」または「定昇相当分込みの1人平均3%または7500円」。また、パート労働者の人事処遇についても触れ、「(1)時間当たり、昇給・昇格分+1%、8円、または (2)3%、25円」との基準を提示している。
さらに将来、企業内組合の形をなさないクラフトユニオン型の組合の増加が予想されることから、労働市場で横断的に適応可能な、職能給を主体とした普遍的な賃金制度や交渉のあり方の構築の必要性を指摘した。

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