日本経団連タイムス No.2797 (2006年1月19日)

日本経団連労使フォーラム開催

−競争力高める企業戦略を探る


日本経団連は12、13の両日、都内で「第108回日本経団連労使フォーラム」を開催した。全国の経営トップや人事・労務担当者など約440名が参加した今回のフォーラムでは、「競争力を高める企業戦略〜積極果敢な経営革新をめざして〜」を総合テーマに、新たな人事戦略や今次の春季労使交渉における課題・対応策などを探った。1日目はまず奥田碩日本経団連会長が、開会あいさつと基調講演を行った。

続いて大田弘子政策研究大学院大学教授が「日本経済の行方」と題して講演。大田教授は、日本経済は踊り場を脱却し、安定した回復軌道にあると評価するとともに、今回の景気回復の特徴として(1)企業の体質が強化されたこと (2)米中経済が追い風となったこと (3)企業から家計への波及が遅かったこと (4)消費が堅調であること (5)回復過程において地域間にバラつきがあること――の5点を挙げた。また、日本経済の今後の課題は人口構造問題であると指摘。これを乗り切るためには、よりいっそうの生産性向上を進め、構造改革を継続するとともに、高齢者を消費者・投資家とみる、多様なライフスタイルを選択できる柔軟な社会が到来したと考えるなど、「人口の波」を前向きにとらえることが必要であるとの考えを示した。

日本経団連・矢野弘典専務理事の講演「経営側の基本姿勢〜経営労働政策委員会報告の主張〜」に続いて行われた企業トップによるパネル討論にはパネリストとして、柴田昌治日本ガイシ会長(日本経団連副会長・経営労働政策委員長)、加藤丈夫富士電機ホールディングス相談役(労使関係委員会共同委員長)、大橋洋治全日本空輸会長(雇用委員長)が参加。日本経済新聞コラムニストの西岡幸一氏をコーディネーターに「日本企業のグローバル戦略」について話し合った。

1日目最後は、高木剛日本労働組合総連合会(連合)会長が「労働組合の果たすべき役割」と題して講演を行った。高木会長は今日の日本を覆っている不安・不信の原因の一端は現在の産業・企業のあり方にあるとの考えを示し、その払拭のために企業労使が果たすべき役割が大きいことを示唆した。また、連合の当面する主要課題として労働組合組織率の回復や、企業内組織率の低下と企業内労働組合の空洞化(企業別労働組合という組織形態の有効性に関する疑問、企業別労働組合を前提とした労働法の形骸化)などを挙げた。

2日目は紀陸孝日本経団連常務理事が「春季労使交渉・労使協議の手引きのポイント」を解説したのに引き続き、産別労組リーダーによる講演が行われ、加藤裕治自動車総連会長、宮園哲郎基幹労連中央執行委員長、落合清四UIゼンセン同盟会長代行が「今次交渉に臨む産別方針と政策・制度要求」を説明した。

続く企業労務担当役員によるパネル討論では、平山喜三新日本製鐵取締役、谷川和生東芝執行役常務、伊地知隆彦トヨタ自動車常務役員、横山敬一郎日本通運常務理事をパネリスト、労働評論家の久谷與四郎氏をコーディネーターに、「競争力強化のための人事戦略」について話し合った。
フォーラムの最後は評論家の大宅映子氏が、「輝いて生きるには〜家庭と仕事の距離」と題する特別講演を行った。

【出版・研修事業本部研修担当】
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