日本経団連タイムス No.2807 (2006年3月30日)

「知的財産推進計画2006」策定へ提言/政策強化に向けて具体的な課題提示

−中長期的視点で制度運用/保護と利用の均衡確保など


日本経団連(奥田碩会長)は22日、「『知的財産推進計画2006』の策定に向けて」と題する提言を発表した。同提言は、政府の知的財産戦略本部(本部長=小泉純一郎総理大臣)が6月ごろに取りまとめる予定の「知的財産推進計画2006」に対し、経済界の意見を反映させることを目的としたもので、2003年以来、毎年取りまとめを行っている。同提言は、産業技術委員会知的財産部会(加藤幹之部会長)と産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)が協力して取りまとめたもので、知的財産政策の強化に向けた具体的な課題を提示している。
今後の政策の方向性としては、これまでの改革の中で、すでに一定の成果を挙げている分野においては、整備された新たな環境下で産業界のイノベーション実現を促進していくことが重要であると指摘。そのためには、(1)中長期的な視点に立って、制度の安定的な運用・活用を行い、その経験や結果を次の見直しにフィードバックしていくべきである(2)保護中心から「保護と利用のバランスの確保や活用」へ、また国内問題から国際問題へと重点を移していくことが求められる(3)世界をリードする知的財産立国の実現に向けた新しい課題に取り組むに当たって、予期せぬ弊害を生まないよう、実態の把握を含めて、十分な検討が必要である――と訴えている。

コンテンツ・ビジネス06年度に基盤整備を完成

また、06年度に集中改革期間の最終年度を迎えるコンテンツ・ビジネスについては、06年度にコンテンツ・ビジネスの基盤整備を完成させ、07年度からはコンテンツ・ビジネスの飛躍的拡大に向けた攻めの改革をさらに推進するべきであるとしている。
提言が取り上げた主な課題は次のとおり。

1.知的財産の活用

ユビキタス時代におけるコンテンツ流通促進のための基盤整備として、コンテンツ・ポータルサイトの整備や、新たなビジネスモデルの構築に向けたソフト・ハード等業界の連携による環境整備、映像コンテンツのブロードバンド配信円滑化に向けた環境整備などを行う。また、法的環境面の整備については、ライセンス契約の保護や、知的財産のグループ管理、著作権の利用に関する権利の整備、デジタル時代に対応した「私的使用」の範囲の明確化、IPマルチキャストによる放送の同時再送信に関する著作権法上の位置付けの明確化等に努める。さらに活用と権利保護の調整の側面からは国際標準化の推進と知的財産政策の調和や、リサーチツール特許の活用等の問題に取り組む。加えてコンテンツにおいては制作支援・作品流通促進・文化保全のためのアーカイブの整備なども進める。

2.知的財産の創造

産学連携における実態を踏まえた柔軟な対応や、職務発明に関する継続的な検討、コンテンツにおける映像産業集積クラスターの整備、制作にかかる金融・税制措置の整備を進める。

3.知的財産権の保護

医療関連行為の特許保護強化や劇場上映作品の海賊版対策の強化、中古ゲームソフト流通をめぐる課題の検討等を行う。

4.知的財産分野における国際問題への対応強化と国際展開の推進

世界特許の実現や海外出願のための環境整備、模倣品・海賊版対策の一層の推進、海外における先使用権制度の整備促進等を行う。コンテンツにおいては、コンペティションや見本市の抜本的強化、国際共同制作や日本コンテンツの海外展開への支援など、国際展開のための環境整備を図る。

5.有効な特許審査

増加する特許審査請求件数に対応するために、政府に対して、審査官のさらなる増員や、審査手続きの柔軟化、審査レベルの均一化を求める。

6.コンテンツ人材の育成

ビジネス・プロデューサー育成プログラムや、最新技術に精通したクリエイター育成、融合人材の育成等、各種人材育成を支援するとともに、海外との交流の活発化、教育基盤の整備を図る。

7.ライブ・エンターテインメントの振興

観光基本法によるライブ・エンターテインメント集積地の規定、カジノにかかる法整備の検討、シアターカレンダーの配布など、ビジターやツーリストを市場に呼び込む仕組みづくりを行う。

【環境・技術本部開発担当/産業本部産業基盤担当】
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