日本経団連タイムス No.2810 (2006年4月20日)

「歳出入一体改革に関する中間とりまとめ」公表

−「スリムで強靭な政府」構築求め課題など提案/「活力ある経済社会」の実現へ


日本経団連(奥田碩会長)は18日、「歳出入一体改革に関する中間とりまとめ〜スリムで強靭な政府の構築を求める〜」を公表し、政府・与党関係方面に建議した。
現在、政府、与党において、歳出入一体改革に関する議論が行われており、この6月には、経済財政諮問会議が改革の選択肢と工程表を公表する予定である。こうした検討に経済界の考え方を反映させるため、日本経団連では税制委員会を中心に、財政制度委員会、社会保障委員会等と連携をとりつつ検討を進め、このたび、中間とりまとめとして改革に向けた課題と基本的考え方を明らかにした。
なお、マクロ経済フレームや具体的な歳出の削減額、必要となる増収額などについては、6月以降、さらに検討を深めていく予定である。

基本的考え方

国、地方の長期債務残高が対GDP比で150%を超えるなど、わが国財政は先進国中最悪の状況であり、歳出入一体改革が喫緊の課題である。今回の中間とりまとめでは、まず、改革を進めるに当たり、グローバルな競争の進展や本格的な人口減少社会といった内外の環境を踏まえ、今後わが国がめざすべき経済社会の姿と、それを実現するための政府の姿や役割を提示した。
めざすべき姿は、『高付加価値を生み出す製造業と高品質のサービス業とが、相互に連携し、生産性を高めあう、活力ある経済社会』である。そうした経済社会を実現するために、行政、財政、社会保障、税制を通じた歳出入一体改革の推進によって「スリムで強靭な政府」を構築すべきとしている。たゆまぬ研究開発、技術革新による活力ある市場の創出、潜在成長力強化、自助努力で対処できない事態に対応できる安心の枠組みの確保に向けて政府がこれまで以上に役割を発揮することを求めている。
このような考え方に立って、中間とりまとめでは、可能な限り早期にプライマリー・バランスを回復し、その後は、政府債務残高そのものの縮小をめざすべきであり、まず、行政改革や歳出の徹底した見直しを前提に、税制の抜本改革についても速やかに検討を進めるべきであると指摘している。

各分野における主な提案事項

各分野における改革すべき主要事項は次のとおり。

1.行政

  1. 公務員制度の改革(採用から再就職までを通じた内閣による幹部職員の一元管理など)
  2. 情報通信技術(ICT)の有効活用など

2.財政

  1. 地方の歳出総額の削減目標の設定、地方財政計画の縮減(最もコストの低い自治体の単価を基準とした地方財政計画の策定等)
  2. 民間活力発揮のための重点配分(科学技術の振興、資本蓄積の促進、女性・高齢者・外国人の能力発揮のための社会的インフラ整備、子育て支援等)

3.社会保障

  1. 2010年代初頭までの社会保障給付費の伸びを経済の伸び以下に抑制
  2. 年金、医療、介護につき、給付の抑制に向けた数値目標の提示、給付の範囲や水準の見直し
  3. 社会保障と税を通じた共通番号、社会保障個人会計の整備

4.税制

  1. 国際競争力強化に資する法人課税の見直し(法人実効税率の引き下げ、減価償却制度の抜本的見直し)
  2. 地方における法人所得課税の段階的な廃止。税源偏在や景気による影響の軽微な地方消費税の拡充
  3. 歳出合理化を前提として、経済情勢や税率引き上げの影響を見極めつつ、できるだけ早期に、消費税率を段階的に10%に引き上げ
【経済本部税制・会計担当】
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