日本経団連タイムス No.2813 (2006年5月18日)

提言「欧州統合と日欧経済関係についての基本的考え方」公表

−日欧連携の具体策を提案


日本経団連は4月18日、提言「欧州統合と日欧経済関係についての基本的考え方」を公表した。EUの拡大・深化という欧州情勢の大きな変化はEU域内外の企業のビジネスの可能性を大きく広げるものとなっている。同提言は、このように新たな局面を迎えつつある日欧経済関係について、さまざまな観点から考え方を整理するとともに、日欧関係強化に向けた日欧間の協力のあり方についての考え方を取りまとめたものである。

提言ではまず、「欧州統合に関する基本認識」の項で、EUの「拡大」と「深化」について、それぞれの経済的な意味合いについて触れ、日本経団連の考え方を提示している。EU拡大に関しては、日欧企業の間のビジネス拡大につながるとの期待感を表明。特に昨年10月に正式なEU加盟交渉が始まったトルコについて、交渉の行方が注目されるとし、加盟国の多様性を尊重しつつ全体の求心力を高めてきたEUにとって、トルコをメンバーに迎えることは、ビジネスパートナーとしてのEUの魅力を一層高めることから、その早期加盟への期待を明らかにしている。
また、こうしたEUの機構改革が円滑に進み、単一通貨ユーロの一層の普及などを通して、欧州の経済力が強まることが望ましいと述べている。続く「日欧経済関係緊密化に向けた課題」では、日本企業がEU市場でビジネスを行う上で困難を伴う事項について改善を要望している。例えば、「EU指令と加盟国法」に関して、EUレベルで法制度が統一化されていくことは、ビジネスの観点から基本的に望ましいとした上で、こうした欧州ワイドの制度設計は、企業活動に極めて重大な影響を与えることから、経済的な影響が十分に考慮され、企業の声が反映されることを求めている。

また、「環境政策」については、域内外の企業の事業活動に少なからぬ影響を及ぼすことから、「新化学品規制」や「電気・電子機器の廃棄に関する指令」など具体例を挙げて望ましい規制のあり方について提言している。
その他、日本企業にとっても関心の高い「貿易障壁の除去」「国際会計基準」「競争政策」「柔軟な労働市場」などといった課題についても、その具体的な問題に触れ、日欧経済の一層の緊密化に向けた改善を要望している。

提言の最後、「新たなる日欧経済関係に向けて」では、こうした日欧間に横たわる課題に取り組むとともに、グローバルな課題の解決に向け、日欧が連携して対応するための具体的な方策について提言している。ここでは、グローバルな課題に対して、日欧が力を合わせて対応していく必要があるとして、例えば、WTO新ラウンドや地球環境問題、知的財産権保護への取り組みといった重要課題への対応などについて日欧の連携・協力を提案している。
また、これらの課題を解決していくため日欧は、2国間や多国間、地域間といった多層な連携を同時並行で進めていくことが必要であると結論付けている。

日本経団連は同提言を日本政府関係方面に建議するとともに、英訳版を欧州委員会の駐日代表部やヨーロッパ各国の在京大使館、日本経団連のカウンターパートである欧州各国の経済団体などに送付した。今後、欧州要人との直接対話の場など、あらゆる機会をとらえて、その実現を働きかけていくこととしている。

【国際経済本部欧州・ロシア担当】
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