日本経団連タイムス No.2818 (2006年6月22日)

提言「WTO新ラウンド交渉の成功を望む」公表

−06年中の最終合意めざして加盟国に政治的決断を促す


日本経団連は20日、提言「WTO新ラウンド交渉の成功を望む〜2006年中の最終合意を目指して〜」を発表した。WTO新ラウンド交渉では、昨年12月の香港閣僚会議の後も交渉は難航し、4月末を目標としていた大枠合意も先送りとなった。交渉の終結期限である今年中に最終合意を実現するためには、6月末までに、中心となる農業と鉱工業品等の分野において、大枠合意を実現する必要がある。そこで日本経団連では、期限を目前に、各国に政治的決断の時期を逸することのないよう改めて求めるため、提言を取りまとめた。概要は次のとおり。

1.新ラウンド交渉の終結に向けて―主要交渉分野に関する主張

(1)加盟国の政治的決断を

現在、交渉は、農業の関税引き下げ、農業の国内補助金削減、ならびに鉱工業品の関税引き下げをめぐって膠着し、いわゆる三すくみの状態に陥っている。各国が相手国からより多くの譲歩を求める一方で、自らの譲歩を拒否しているからである。膠着状態の打開のため、現実的な調整を行うべく決断する時期を逸してはならない。
合意が先送りとなれば、世界でFTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)が加速する中、WTOへの信頼が揺らぎ、グローバルな自由化が一層困難となり、加盟国共通のルールと、整備された紛争解決手続きの実効性も損なわれかねない。
農業、鉱工業ともに、高関税ほど大幅な削減をすること等、これに伴う多くの論点には既に合意ができている。米国のTPA(貿易促進権限)の失効を控え、今月末が、これまでの合意による自由化のメリットを現実のものとする最後の機会となる。

2.新ラウンド交渉終結を見据えた課題

各国は、まず新ラウンド交渉終結に全力を尽くすことが最優先の課題である。その上で必要な取り組みに関する具体的主張は、次のとおり。

(1)WTO体制の維持・強化の継続

各加盟国とも、WTO体制の維持・強化を通商戦略の基軸に据えるべきである。FTA、EPAで補完しつつも、世界経済の安定と成長の基盤となるWTOにおいて、自由化とルールの整備を継続すべきである。

(2)各国経済界の役割

(1)途上国の経済界との連携

政府間で意見が対立する論点に関しても、経済界共通の利益を実現する観点から連携し、政府に働きかけることが可能である。成長が著しい新興途上国とともに、自由化による成長に向けて、経済界は途上国との連携を強化する必要がある。

(2)自由化への理解を求めるアピール強化

交渉推進には、経済界だけでなく国民一般の理解と支援が不可欠である。経済界は、消費者、農業界などとの対話を進め、広く自由化のメリットをアピールし、WTOによる自由化への支持を訴える必要がある。

(3)交渉進展に向けたWTOの改革

交渉の進展に向けては、第1に、コンセンサス原則の緩和、第2に、客観的データおよび分析に基づく交渉の促進、ならびに途上国支援の強化が必要である。加盟国はこうした観点からの、WTO改革に向けた検討を進めるべきである。

(4)わが国通商戦略のあるべき姿

WTOは将来的にも、わが国産業のグローバルな競争力強化の基盤となる。WTOを基軸に位置付け、戦略的にWTO体制の維持・強化を図る必要がある。そのためには、内閣官房に通商戦略本部を設置し、通商担当大臣を任命することにより、通商戦略の構築機能を一元化して体制整備を行う必要がある。また、戦略立案・実行に当たり、官民の連携を一層強化することが重要である。

【国際第一本部貿易投資担当】
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