日本経団連タイムス No.2822 (2006年7月20日)

日本・インド経済連携協定の早期実現求め提言

−広範囲・大幅な関税撤廃など4課題の解決を要望


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は18日、提言「日本・インド経済連携協定の早期実現を求める」を発表した。

近年、インドはいわゆるBRICsの一員として国際的に注目されており、わが国経済界にとっても、市場あるいは製造拠点として大きな魅力を持つ国となっている。17日には、日印間で経済連携強化の方策について約1年間議論してきた共同研究会の報告書が、日印両国首脳に提出された。その中には、日印での経済連携協定(EPA)の推進が盛り込まれている。日本経団連は、昨年11月に奥田碩・前会長を団長とするミッションをインドに派遣し、シン首相をはじめインド政府の要人にEPAの重要性を働きかけてきた経緯もあり、この機会に日本・インドEPAの早期実現を求める提言を取りまとめることとした。
提言では、互恵的で包括的かつレベルの高いEPAの早期実現とともに、次の4点の課題の解決を要望している。

課題の第1は、物品の貿易について。インドの関税は、近年下がってきてはいるものの、依然高水準にある。また、インドと他国のEPA交渉では、かなりの数が関税引き下げの除外品目となっている。しかしながら、日本・インドEPAでは、WTOと整合性のとれたものであること、すなわちGATT24条に規定する実質的にすべての貿易についての広範囲かつ大幅な関税撤廃が行われることが必要であると強調している。

課題の第2は、投資・サービス分野について。ここでは具体的に3点を指摘している。第1点は投資ルール。わが国企業が安心して投資できるよう、投資許可段階での内国民待遇、最恵国待遇、さらには投資を制約するようなパフォーマンス要求の禁止など、先進的な投資ルールの締結をめざすべきだと強調している。第2点は、既存提携先同意書規制。インドでは、既に進出しインド企業と合弁・提携している外国企業が新事業を立ち上げる際には、既存提携先の同意が必要となっている。2005年1月以降にインドに進出した企業については既に不要となっているが、それ以前にインドに進出した企業については、引き続き同意書の取得義務がある。同規制は、迅速で機動的な事業展開の制約要因となることから、その撤廃を強く要求している。第3点は、サービス分野の外資規制。インドにおいては、小売、不動産、銀行、保険、情報サービスなどの業種で外資規制があるため、これらの緩和・撤廃を要望している。

課題の第3は税制について。インドの税収は関税依存度が高いことから、EPAによる関税引き下げにも耐え得る税体系となるような税制改革の必要性を指摘している。その上で、複雑で州ごとに異なるインドの税制を、わかりやすく透明度の高いものにするよう要望している。

課題の第4は、インフラと労働法制の問題について。これらはインドへの投資の最大の阻害要因となっている。インドのインフラ不足は深刻であり、インドの持続的経済成長そのものに悪影響を及ぼす恐れがあることから、わが国からのODAも活用しつつ、インド国民・企業のためにも積極的に整備すべきと主張。加えて、国際的にみて硬直的といわれる労働法制についても見直しを要望している。

日本経団連では、日本・インドEPAの早期実現に向け、政府・与党、関係機関に働きかけていく予定である。

【国際第二本部国際協力担当】
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