日本経団連タイムス No.2830 (2006年9月21日)

平成19年度税制改正で提言/「経済成長維持・国際競争力強化」「経済成長と財政健全化の両立」へ

−税体系抜本改革に向けた第1歩として位置づけを/税収増の流れをより確かに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は19日、「平成19年度税制改正に関する提言」を取りまとめ公表した。
わが国の景気はようやく回復軌道に乗り、企業業績の回復等を背景として税収も当初予算を大幅に上回る増収となっている。経済活性化による税収増大の流れをより確固たるものとするために、平成19年度税制改正は、経済成長の維持・国際競争力強化の観点、経済成長と財政健全化の両立の観点を踏まえつつ、税体系の抜本改革に向けた第1歩として位置づけられるべきである。
同提言の概要は次のとおり。

1.法人税制

  1. 欧州やアジア諸国に比して10%程度高い法人税実効税率を企業活動活性化の観点から引き下げていくべき
  2. 減価償却制度について、先進国では取得原価の100%償却を認めており、わが国で95%までとされている償却可能限度額を撤廃すべき。併せて、法定耐用年数の短縮を図るべき
  3. 巨額の更正が相次いでいる移転価格税制について、国際的な二重課税を排除するよう、事前確認制度や相互協議の迅速化、定義の明確化や改正などが必要
  4. 会社法改正で解禁される三角合併について、租税回避行為防止措置を講じつつ、組織再編税制の一環として手当てを行う
  5. 地方税としての法人所得課税や償却資産に対する固定資産税等の見直し
  6. 非営利法人活動を今後のわが国社会において積極的に支援するための税制を構築するとともに寄附金税制を抜本的に拡充すべき
  7. 企業会計基準の国際的なコンバージェンスが進む中で、税制上も適切な対応を図るべき

2.所得税ほか

  1. 上場株式等の譲渡益・配当課税の軽減税率の適用延長
  2. 少子化対策として、扶養控除と児童手当を一本化し、子育て税額控除を創設
  3. 65歳までの継続雇用を促進するための税制の創設
  4. 企業年金に対する特別法人税の撤廃や確定拠出年金に関する税制の拡充
  5. ベンチャー企業に対する投資優遇税制(エンジェル税制)の延長・拡充
  6. 金融所得課税の一元化の推進、社会保障番号の活用による納税インフラ構築
  7. 経済取引のペーパーレス化に即した印紙税の抜本的見直し

3.土地・住宅税制

  1. 現行の住宅ローン減税に代わる恒久的な住宅投資減税の導入検討
  2. 所得税から個人住民税への税源移譲に伴う住宅ローン減税効果喪失への対応
  3. バリアフリー、省エネ、防犯などのリフォーム促進税制の導入等

4.環境税

ガソリン価格が高騰を続ける中でも著しい消費減退は無く、環境税に効果が無いことは明らかであり、温暖化防止には寄与しない

5.道路特定財源

道路特定財源は受益者負担の原則に基づいた制度であり、現行の暫定税率を維持したままで使途を変更することに納税者の理解を得ることは困難。暫定税率の引き下げや自動車・燃料関連課税の簡素化を進めるべき

◇ ◇ ◇

また、提言では最後に、経済成長を維持しつつ安定的な税収を確保していくためには、税制の抜本改革において消費税の拡充を中心に据えるべきであり、基礎年金の国庫負担割合の引き上げへの対応や経済活性化を確固たるものとする税体系の再構築の必要性から、早期の税率引き上げが必要であることを示している。
日本経団連では、年末に向けた来年度税制改正で産業界の意見が反映されるよう、引き続き積極的な働きかけを行っていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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