日本経団連タイムス No.2830 (2006年9月21日)

日豪経済連携協定の早期交渉開始求め提言

−資源・エネルギー安定供給など、期待される効果示す


日本経団連および日本商工会議所、日本貿易会は19日、提言「日豪経済連携協定の早期交渉開始を求める」を取りまとめた。日豪間では、2005年4月の首脳合意に基づき、両国間の自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の実現可能性やメリット・デメリットを含め検討する政府間共同研究が実施されているところであり、特に豪州側が今年末までに終了し、交渉入りすることを強く希望している。経済界としても、このように両国の政府間共同研究が山場を迎えている現在、アジア大洋州地域におけるわが国の重要なパートナーである豪州とのEPA交渉の早期開始を後押しする必要があるとの判断から、今回、提言を取りまとめることとした。提言の概要は次のとおり。

1.日豪経済連携協定(EPA)の早期交渉開始の重要性

豪州は、アジア大洋州地域において日本が価値観を共有する先進国として重要な国である。また両国は、相互補完的な輸出入関係にある。特に豪州は、石炭、天然ガス、鉄鉱石、牛肉等の、わが国にとって不可欠な資源・エネルギー、食料の生産国であり、同国との関係強化はわが国の資源・エネルギーおよび食料安全保障上も重要といえる。
他方、豪州は既に米国、タイ等とFTAを締結しており、これらの国々に比べ、わが国が貿易・投資上、不利な条件に置かれている。さらに、現在、豪州が中国と交渉中のFTAが妥結に至れば、特に豪州からの資源・エネルギー輸入の面で、日本が中国に劣後することが懸念される。豪州側が日本とのEPA締結に極めて熱心な姿勢を示している好機を逸することなく、日豪EPA交渉を早期に開始することが肝要と思われる。

2.日豪EPAに期待される効果

(1)資源・エネルギーの安定供給

現在のところ日豪間では、民間企業間の長年にわたる信頼関係に基づき、市場メカニズムの中で資源・エネルギーの円滑な取引が行われているが、資源・エネルギーの輸出制限の禁止や、同分野における投資環境の改善等を日豪EPAに盛り込むことは、わが国の資源・エネルギーの安定供給に資する。

(2)食料の安定供給

わが国の食料自給率を維持、向上させることは重要であるが、同時に、自給で賄いきれない分の、海外からの安定供給を確保することも重要な課題である。
日豪EPAにより、食料に関する輸出制限の禁止、食料生産に投資する際の環境改善などを実現できれば、わが国の食料安全保障に寄与すると期待される。

(3)関税

日本から豪州への主要輸出品のうち、自動車・自動車部品、エンジン、タイヤ、テレビ等に5〜10%の関税が課されている。日豪EPAにより関税が撤廃されれば、日本製品の価格競争力が増し、日本からの輸出増も期待される。既に豪州では米国製品に対する関税はゼロまたは段階的に引き下げられており、米国企業との対等な競争条件を確保するためにも、関税引き下げは急務である。

(4)税制

移転価格税制の適用によって、日豪間で二重課税が発生している。租税条約により、両国の当局による相互協議で解決が図られることになっているが、努力規定にすぎないため、実際には合意に至らないまま、企業の負担となるケースが多い。
こうした企業へのしわ寄せを防ぐため、日豪EPAにより当局間の相互協議の円滑な実施を保障すべきである。

(5)政府調達

WTO政府調達協定に加盟していない豪州政府の調達については、最恵国待遇、内国民待遇といった条件が、法的に約束されていない。
日豪EPAにより、これらの条件が法的に保障されれば、約5兆円ともいわれる豪州の政府調達市場へのアクセスが改善される。

(6)その他

米豪FTAでは、サービス分野のうち、電気通信、音響映像等の分野で、豪州がWTOサービス協定(GATS)上、約束している水準以上の自由化が約束されている。これらは日本企業が競争力を有する分野でもあり、日豪EPAで同様の成果を得ることができれば、新たな事業機会創出につながることが期待される。
また、米豪FTAでは、弁護士、会計士、エンジニアといった自由職業サービスについて、資格の相互承認を検討するための共同委員会が設置されている。日豪間でも同様に自由職業サービスの資格や基準の相互承認を検討することは有用である。

3.日豪EPAを考える上で特に配慮すべき事項

日本の豪州からの輸入のうち有税農林水産品が13%を占めており、その大部分が、牛肉、乳製品、小麦、大麦、砂糖等、いわゆる「センシティブ品目」である。また、豪州からの輸入額全体に占める比率は0.3%とわずかではあるが、非鉄金属も国内的にセンシティブな分野である。これらについては十分配慮すべきである。

4.結論

前記のようなセンシティブな分野に十分配慮しつつ、政府間共同研究において、日豪EPAのメリット・デメリットを早急に検討した上で、できる限り早期に日豪EPA交渉を開始することを強く要望する。

【国際第一本部北米・オセアニア担当】
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