日本経団連タイムス No.2844 (2007年1月25日)

WTOドーハ・ラウンドに関する共同声明公表

−欧米、アジア、南米、大洋州の諸経済団体と共同で


日本経団連は15日、欧米、アジア、南米、大洋州の諸経済団体と共同で、「WTOドーハ・ラウンドに関する共同声明―失敗は許されない―」を公表した。共同声明の要旨は、(1)世界の経済界は、WTOドーハ・ラウンドの速やかな妥結を求めている。今次ラウンドの失敗は決して許されない(2)交渉における主要な論点について今後2〜3カ月以内に野心的かつバランスのとれた合意を実現するため、WTO加盟国は、より柔軟な提案を携えて、交渉を再開しなければならない(3)鉱工業品、サービス、農業それぞれの分野において、ビジネス環境の実質的な改善をめざす必要がある――の3点。共同声明の本文は次のとおり。

「失敗は許されない」強調

世界経済にとって、また、貧富にかかわらず全ての国の競争力にとって、今次ラウンドの失敗は許されない。世界貿易の60%を占める国々の経済界を代表して、われわれはWTOドーハ・ラウンド交渉の早期再開と野心的かつ速やかな結果を求める。

仮に、交渉が早期に再開されず、また今後2〜3カ月以内に主要な論点に関する合意がなされなければ、ドーハ・ラウンドの妥結に向けた機会の窓は閉じられてしまうであろう。この期限を逃せば、交渉再開の可能性が遠のくばかりか、先送りに伴い政治レベルの関与が弱まり、新たなラウンドの立ち上げに向けた加盟国の熱意も薄れてしまう恐れがある。また、一括受諾方式の下では、これまでの交渉で積み上げられてきた各国の提案は失われてしまうであろう。

政府はこれまでの交渉を通じ合意は困難と考えているかもしれないが、経済界にとって、何をもってラウンドの成功と言えるのかは明確である。すなわち、合意は野心的であるとともに、以下の内容が含まれなければならない。

ラウンド交渉において何がしかの成果を実現しなければならないとすれば、一括受諾方式という原則は、今ラウンドの主要な要素として維持すべきである。このことは、数字をみれば明らかであり、野心的な成果を得ることができれば、多大な利益がもたらされる。世界銀行の試算によれば、鉱工業品と農業貿易を自由化しただけでも、その効果は2870億米ドルに上り、その3分の1は途上国にもたらされる。サービスの自由化の効果は、この5倍にもなるのである。

ドーハ・ラウンドで野心的な成果を上げることができれば、その利益は大きいが、決裂した場合のコストは広範かつ重大である。得べかりし利益が失われるだけでなく、ラウンドが失敗に終われば、WTOおよび、ルールに基づく多角的貿易制度そのものが大きな困難に直面することになる。すなわち、地域主義と保護主義の台頭、金融市場へのショック、そして、国内経済改革を促進する機会の喪失という結果が待ち受けている。

ラウンド成功の利益を享受し、失敗のコストを回避するため、世界の経済界は、主要なWTO加盟国の交渉担当者および首脳に対し、速やかに交渉のテーブルに戻り、より柔軟な交渉姿勢を示すことを強く求めるものである。経済界としては、2〜3カ月以内に野心的な合意に達するためのあらゆる努力を支持する。失敗は許されない。

【国際第一本部貿易投資担当】
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