日本経団連タイムス No.2855 (2007年4月12日)

スラユット・タイ首相と懇談

−日タイEPA署名機に経済関係強化を期待


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は4日、東京・大手町の経団連会館に、タイ王国のスラユット・チュラーノン首相一行を迎え、前日署名された日タイ経済連携協定(EPA)や両国間の経済問題全般をめぐって意見交換を行った。

席上、御手洗会長は、日タイEPAは、両国間の貿易、投資、サービス等の自由な移動を促進するとともに、各種の協力を含む包括的な経済連携の枠組みであり、今後、国内の批准手続きが進み、協定が発効すれば、両国経済関係がさらに緊密化することが期待されると指摘。日本経団連では、東アジアを中心としたEPAの積極的推進を主要政策課題の1つととらえ、昨年10月には、提言「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」06年10月26日号既報)を取りまとめ、政府・与党など関係方面に働き掛けてきたと述べた。
また、現状では、タイをはじめ、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との2国間EPAについては、おおむね形が整ってきており、今後は、アジアにおけるEPAのハブとして、ASEAN全体と包括的なEPAを締結することが極めて重要な課題となっているとの見方を示した。

これを受けてスラユット首相は、日タイEPAは単なる自由貿易協定にとどまるものではなく、非常に包括的であると述べた上で、具体的には、タイにとって農業、工業、さらには人の移動に関して有益である一方、日本にとっては鉄鋼業、自動車産業・同部品産業等に恩恵が大きく、両国に利益をもたらすとの考えを示した。
また、日タイEPAについて、「タイがこれまで結んできた協定の中でも最も完成度が高く、日タイ間の歴史においてこのような重要な協定にかかわれたことを、私としても誇りに思っている」と述べた上で、「今年は日タイの外交関係が樹立されて120周年を迎える記念の年であり、日本とタイが手を取り合って邁進していく1年となることを願う」と語った。

懇談においては、宮原賢次副会長がタイにおける外国投資を規定する外国人事業法の改正に関連して、投資法制の変更に当たっては、実行までに十分な周知、猶予期間を置くよう要望した。これに対し、スラユット首相からは、法改正から施行までの猶予期間について柔軟に対応するとともに、法改正の趣旨や方法などについても、事前に情報提供を図るなど透明性の確保に努めたいとの説明があった。
同じく外国人事業法改正に関して、庄山悦彦副会長が、現地日本人商工会議所にも意見聴取してほしい旨を述べた。スラユット首相は、タイ政府は既に日本人商工会議所の意見も聴いていると述べた上で、今般の外資規制は為替取引など、投機に対する規制が主眼であり、製造業など、タイ政府投資委員会(BOI)が認可する投資案件には影響しないと説明した。また、タイ政府としては、日本人商工会議所との意見交換の場をいつでも設けていきたいとの意向を示した。

こうした活発な意見交換を受け、最後に御手洗会長が、日本経団連として、経済関係をはじめ、さまざまな分野で両国の交流がさらに活発化、拡大するよう、これまで以上に取り組んでいくとの決意を表明し、懇談会を締めくくった。

【国際第二本部アジア担当】
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