日本経団連タイムス No.2874 (2007年9月6日)

メルケル・ドイツ首相一行と昼食懇談会開催

−御手洗会長らが意見交換/日本経団連、BDI、共同提言を提出


ドイツ連邦共和国のアンゲラ・メルケル首相一行が8月30日、日本経団連を訪れ、御手洗冨士夫会長ほか日本経団連幹部と昼食を交えて懇談した。2005年11月に首相に就任して以来初となる今回の訪日には、ユルゲン・トゥーマン・ドイツ産業連盟(BDI)会長、ユルゲン・ハンブレヒト・アジア太平洋委員会委員長(BASF会長)はじめドイツ経済界から20数名が同行した。

■両団体会長あいさつ
―日・EU経済関係の発展に向け新たな枠組みの構築が必要

昼食懇談会の席上、まず御手洗会長は、「ドイツは日本にとって欧州最大の貿易相手国であり、日・EU経済関係の中核をなしている」とした上で、「現在良好な状態にある日・EU経済関係をさらに強固なものとするためには、新たな枠組みの構築が必要である」と述べた。また、「日独両国は米国に次ぐ大国として、世界経済の持続的でバランスの取れた発展に大きな責任を有している」として、WTOドーハ・ラウンド、知的財産権の実効的な保護、環境保全と経済発展の両立などにおいて、日独ならびに日・EUが具体的な協力を進めることが求められていると指摘した。続いてトゥーマン会長は、今日のグローバルな課題を解決するためには政治と経済界の協力が不可欠であるとした上で、日本経団連・BDIの共同提言をEUレベルで実現すべく、メルケル首相の尽力を要請した。

■メルケル首相あいさつ
―WTOと相互補完的な日・EU間の協定の必要性、日独の高度な技術を活かした気候変動問題への対応等に言及

御手洗、トゥーマン両会長から共同提言を受け取ったメルケル首相は、まず、共同提言を今後の政策運営に有益な示唆を与えるものであるとして評価。その上で、第一に、日独両国は構造改革を推進する必要があると指摘。ドイツとしては、2011年に新規国債発行をゼロとする計画であり、また、同年以降、公的年金の受給開始年齢を段階的に引き上げる予定であることなどを紹介した。第二に、競争力を維持するために技術革新を進める必要があるとして、研究開発費をGDPの3%にまで高めるため、助成金の増額、大学間の競争促進などをドイツとして進めていることを紹介した。第三に、ドーハ・ラウンドの妥結が重要であるとして、日本が果たすべき役割の重要性を強調した。また、(ドーハ・ラウンドの妥結を前に)二国間の枠組みが強調され過ぎていることは危険であるとしつつ、日本経団連・BDIの共同提言がWTOと相互補完的な日・EU間の枠組みの確立を求めている点は評価できるとして、今後、欧州委員会に対し、WTOを補完するような日・EU間の協定の検討を働き掛けていきたいと述べた。さらに、日・EU間の貿易自由化の促進に当たって、非関税障壁の撤廃の重要性を指摘した。

また第四に、来年のG8北海道洞爺湖サミットにおいて、ハイリゲンダム・サミットでの合意が深掘りされるよう期待すると述べた上で、知的財産権の保護促進、ヘッジファンドの透明性向上など国際金融市場の安定性、気候変動問題の解決などが今後も重要なテーマになると指摘した。このうち、気候変動については、温暖化ガスの排出削減の目標をいかにして効率的かつ経済活動への影響を少なく達成するかが重要であるとし、互いに高度な環境技術を有する日独が問題の解決に大きく貢献し得るとの見方を示した。

その後行われた懇談では、米倉弘昌副会長・ヨーロッパ地域委員長から、日・EU経済連携協定に関し、新しい協定の締結に向けてさまざまな問題点を洗い出し議論すること自体、経済関係の一層の緊密化につながるとの発言があった。また、三村明夫副会長からは、地球温暖化の防止に関し、京都議定書の国際枠組みについて、米国、中国、インドをはじめとするすべての主要排出国が参加しやすい枠組みとする必要があること、温暖化対策の決め手は既存の省エネ技術の普及と革新的な技術の開発により、省エネ型のシステムに社会を変革することにあるとの発言があった。ドイツ側からはハンブレヒト委員長が、イノベーションの推進ならびに地球温暖化防止に対する日独間の技術、ノウハウ面での協力の必要性について発言した。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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