日本経団連タイムス No.2876 (2007年9月20日)

「国・地方を通じた財政改革に向けて」を公表

−財政改革のあり方を提案/セーフティネットの持続的確保と地方の自立的発展へ


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は18日、提言「国・地方を通じた財政改革に向けて」を公表した。同提言は、日本経団連の新ビジョンで掲げた政策課題である税・財政一体改革について、同日公表した「今後のわが国税制のあり方と平成20年度税制改正に関する提言」記事別掲)とあいまって、経済界の考え方を明らかにするものである。同提言の概要は、次のとおり。

■財政の現状と課題

現在、政府・与党は当面の財政健全化目標として2011年度までの国と地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を掲げている。まずは、これを確実に実現する必要がある。その上で、財政の中長期的な持続可能性を確立する観点からは、基礎的財政収支黒字化を第一歩として、その後にめざすべき健全化目標を設定する必要がある。

また、グローバル化や少子・高齢化の進行といった経済社会の変化に対応し、日本経済の活力を引き続き維持していくためには、国・地方を通じて小さくて効率的な政府を実現し、国民負担率の上昇を可能な限り抑制していくことが不可欠である。

さらに、日本経団連は、豊かで自立的な地方を実現する観点から「究極の構造改革」としての「道州制」を提案している。国と地方の役割分担の見直しを含めて、道州制を見据えた国と地方の税・財政関係のあり方を議論していく必要がある。

■今後の財政健全化目標のあり方

財政健全化に向けては、継続的な取り組みが求められることから、明確な目標や健全化ルールを設定して、着実に改革を進めることが有効である。この点、欧米諸国においては、1990年代に中期的な財政健全化目標と財政ルールを設定することを通じて、財政再建に成功してきた国も多くみられる。そこで、わが国も、こうした事例を参考にしつつ、新たな財政健全化目標を設定・共有することが重要である。財政の持続可能性を確立する観点からは、債務残高の対GDP比の安定的引き下げが必要となる。そこで、例えば国の長期債務残高対GDP比を100%以下にまで低下させることをめざし、予算編成上の基準を設定して歳出入両面の見直しを進めるべきである。

■財政健全化に向けた当面の課題

財政の健全化に向けて、まずは歳出面の改革に取り組む必要がある。当面、政府が閣議決定したいわゆる「基本方針2006」および「同2007」に掲げられた、社会保障、公務員人件費、公共事業など主要分野における2011年度までの歳出削減プログラムを着実に実行していくとともに、その後も、着実な取り組みが求められる。

歳出削減に最大限に取り組んだ上で、なお必要となる社会保障負担の増大に対しては、消費税を中心とする歳入面の見直しにより対応していかざるを得ないと考えられる。

■地方財政改革

国民生活全体の豊かさを向上させるためには、地域経済が自立して発展・成長していくことが求められる。この観点から、日本経団連の新ビジョンでは、道州制の導入によって、経済的に自立可能な「広域経済圏」を確立し、地域の雇用・所得の創出・拡大につなげていくことを主張している。そのためには、国と地方の役割分担を抜本的に見直した上で、国・地方の税・財政関係も、それを踏まえて改革する必要がある。基本的には、地域における受益と負担の関係を明確にしていく方向で、地方が提供する行政サービスに対する財政的責任と税源との整合性を確保していく必要がある。

【経済第一本部経済政策担当】
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