日本経団連タイムス No.2876 (2007年9月20日)

提言「官民連携による健全なインターネット社会の発展に向けて」を発表

−第2回IGFでの5議論テーマ、日本産業界の意見を取りまとめ


日本経団連は、18日、提言「官民連携による健全なインターネット社会の発展に向けて―第2回IGFへの日本の経験の発信―」を発表した。同提言は、11月中旬にブラジルのリオデジャネイロで開催される、国連主催の第2回インターネット・ガバナンス・フォーラム(以下、IGF)に向けて、インターネットのあり方に関する日本産業界の意見を取りまとめたものである。

インターネットは今や、情報社会におけるインフラとして不可欠となっている一方、サイバー犯罪の増加、先進国と途上国の間のデジタル・デバイドの拡大といった負の課題が深刻化している。このような課題については、一国家、一企業のみによる対応では十分な成果を上げられないことから、国際連携による解決に向けて、2003年、2005年に世界情報社会サミットが開催された。そして、現在の民間主導のインターネット管理の枠組みの有効性を確認するとともに、政府、企業、市民社会等あらゆるステークホルダーによる議論継続の場として、IGFの設置が決定された。昨年、アテネで開催された第1回IGFでは、日本経団連もミッションを派遣し、産業界の立場から、インターネット・ガバナンスについての考え方や、携帯電話のスパムメール撲滅等、日本の先進的な取り組み事例を発信した。

提言では、第1章「はじめに」において、提言への導入部として、前述のような経緯について述べた上で、第2章で、第2回IGFへの期待を2点述べている。1点目は、IGFの議論を通じて、具体的な国際協力のアクションが昨年以上に多く生まれることへの期待であり、2点目は、世界各国でインターネット・ガバナンスに関する議論を促進する役割への期待である。日本経団連は、今年5月にクマー国連IGF事務局長をはじめとする主要関係者を招き、IGF東京会議を開催した(5月24日号既報)。日本経団連としては、東京会議のように、さまざまな国や地域で同様の議論の場が設定されるよう、インターネット・ガバナンスに関する啓蒙活動の促進に貢献したい考えだ。

第3章では、IGFで議論される五つのテーマについて日本経団連の基本的見解を述べている。第一に、IPアドレスやドメインネーム等の重要インターネット資源については、技術革新や環境変化に柔軟に対応できる管理体制を維持するためにも、現行の民間主導の枠組みを継続すべきであると主張している。第二に、アクセスについては、デジタル・デバイド解消に向けた国際的な協力・支援の継続が重要であると述べている。第三に、開放性については、表現・言論の自由と著作権やプライバシーの保護のバランスがかねて課題となっているが、適正なバランスを保つためには、政府主導の規制に頼るばかりではなく、民間の自主規制を中心とした取り組みが効果的であると強調している。第四に、セキュリティーについては、特に途上国を対象として、アクセスの改善と同時並行で支援していくことが重要であるとし、国際的なセキュリティーの枠組みとして、インターネットに係る事故や不具合に迅速に対応する組織であるNATIONAL CSIRTの普及促進を提案している。第五に、多様性については、多言語化や高齢者・身体障害者等のデバイド解消に向けた取り組みの継続が必要であると述べている。

第4章「おわりに」では、産業界の見解として、民間主導のガバナンスがインターネットの健全な発展につながるとの見解を改めて示し、締めくくっている。

また、提言本文に加え最後に、日本における官民連携の取り組み事例を二つ紹介している。一つ目は、違法コンテンツ等を排除することを目的として政府が施行したプロバイダ責任制限法と民間協力の事例である。これは、政府が法整備を行い、民間がガイドラインを作成するという官民連携により、表現・言論の自由と権利保護のバランスを確保している好例である。

二つ目の事例として、サイバークリーンセンターを紹介している。これは、コンピューターウイルスの一種であるボットの対策で、これも政府がプロジェクトの枠組みを作り、実際の運用は民間が行っているという官民協力の事例である。

日本経団連では、加藤幹之・情報通信委員会国際問題部会長を団長とするミッションを第2回IGFに派遣し、この提言による意見表明や官民連携の取り組み事例紹介のほか、二つのワークショップを関係団体と共同開催し、インターネット・ガバナンスにおける日本産業界のプレゼンスを高めるとともに、具体的な問題の解決に向けた取り組みを強化する予定である。

【産業第二本部情報通信担当】
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