日本経団連タイムス No.2887 (2008年1月1日)

「建築確認審査の改善を求める要望」公表

−正常化へスケジュール明確化し早急に対策を


日本経団連は12月11日、「建築確認審査の改善を求める要望」を公表し、直ちに政府・与党に建議した。要望の概要は次のとおり。

2007年6月に改正建築基準法、改正建築士法が施行されたことに伴い、建築確認審査が厳格化されたが、現場では混乱が生じ、建築確認審査に要する期間が長期化している。

この背景としては、まず、改正法の施行に先立ち、建築確認審査手続きの運用基準の明確化やその周知徹底が十分なされなかった点が挙げられる。さらに、改正によって新たに導入された構造計算適合性判定については、判定員が不足し、構造計算の迅速なチェックに有効な「大臣認定プログラム」が完成していないことも、審査期間の長期化の要因となっている。

その結果、全建築物の着工床面積は、07年7月から10月の4ヵ月連続で大幅に前年同月の水準を割り込んでおり、収束の見通しも立っていない。

現在、個人消費の動きは鈍化し、設備投資も高水準ながら増勢は一服するなど、景気は減速している。

こうした中、住宅、不動産、建設関連産業は裾野が広く、改正法施行に伴う影響は、既に素材、建設機械、内外装などの業界に及んでいる。とりわけ、地方の中小工務店などは資金繰りが苦しくなるなど、深刻な事態に直面している。

今回の混乱をきっかけに、企業が設備投資の拡充を躊躇し、個人も住宅投資や耐久消費財の消費を手控えることになれば景気の先行きに不透明感が増すこととなる。

そこで、日本経団連では、わが国経済の持続的かつ安定的な成長を確保し、今回導入された制度を確実に定着させ、国民の居住環境を安心安全なものとする観点から、国に対して正常化に向けたスケジュールを明確化し、あらゆる対策を早急に講ずるよう求めており、具体的には次の3点を要望している。

  1. 建築物の安全を確保し、国民の信頼を得る観点から、構造計算に関する大臣認定プログラムを一刻も早く完成、普及させるとともに、構造計算適合性判定員を早期に育成、増員する。
  2. 国土交通省では、建築基準法施行規則の改正や運用に関するマニュアルを作成し、特定行政庁、指定確認検査機関、建築士などに対する説明会や講習会などを開催してきたが、今後も継続的に改正法の趣旨の浸透、徹底を図る努力を行う。
  3. 既に国が打ち出しているセーフティネット貸付や信用保証協会の保証付融資など、中小企業に対する金融円滑化に向けた対策が実効性あるものとなるよう、その周知徹底を図る。
【産業第一本部国土担当】
Copyright © Nippon Keidanren