日本経団連タイムス No.2903 (2008年4月24日)

国際協力における官民連携へ新施策

−外務・財務・経産省から提案受け合意/国際協力委員会


日本経団連国際協力委員会(槍田松瑩委員長、矢野薫共同委員長)は17日、東京・大手町の経団連会館に、国際協力主要3省の幹部(別所浩郎・外務省国際協力局長、玉木林太郎・財務省国際局長、安達健祐・経済産業省貿易経済協力局長)を招き、政府開発援助(ODA)等と日本企業との連携強化のための新たな施策「成長のための官民パートナーシップ」の提案を受けた。これに対して、日本経団連からは、同提案に賛同するとともに、その具体化に向けて積極的に協力することを表明した。

「官民連携」の推進は、日本経団連が15日に発表した提言「今後の国際協力のあり方について」4月17日号既報)でも重要性を強調している点であり、今回の会合は、今後の官民連携強化に向けた重要な第一歩となった。3局長の発言概要は次のとおり。

■ 別所・外務省国際協力局長(政府側提案の概要説明)

今回、政府として「成長のための官民パートナーシップ」を提案したい。同制度は、途上国の貧困削減には経済成長が重要であり、そのためには民間セクターの関与が不可欠であるとの認識に立ち、日本企業の活動とODA等の公的資金との連携(以下「官民連携」)を強化することによって、途上国の成長を加速化することを目的とする。

実施にあたっては、官民双方にとって有意義なパートナーシップを構築するとともに、重要な対外政策目標を双方が共有し、官民一体となって取り組む。具体的には、(1)官民連携に関する民間からの提案案件を採択・実施する(2)官民連携促進のための定期的な官民政策対話を実施する(3)途上国現地における官民連携を促進する――の3点を提案する。(1)については、外務省・財務省・経済産業省・JICA・JBIC(以下「関係省庁・機関」)に各々、「官民連携窓口」を設置した上、途上国の開発(特に経済成長)への貢献が大きい民間企業の活動を、ODA等との連携によって奨励・促進したい。(2)については、関係省庁・機関と日本経団連等との間での政策面での意見交換・情報共有等のための「経済協力等に関する官民対話」を実施したい。(3)については、現地のODAタスクフォースに現地日本企業が参加する「拡大現地ODAタスクフォース」を段階的に設置し、民間企業に蓄積されている情報やノウハウをODAの案件形成に活用するとともに、民間投資促進のためのODAのニーズを把握したい。

■ 玉木・財務省国際局長

途上国の貧困削減のためには、民間主導の経済成長が極めて重要であるとの考え方は、国際的にも確立されている。官民連携については、制度の透明性を確保するとともに、国際ルールを順守した制度設計とすることが肝要である。また、特に円借款については、相手国に債務という形で負担が残ることを考え、先方政府のプライオリティを優先することが重要である。

今年10月に発足する新しいJBICについては、これまでは融資によって官民連携を実施してきたところを、今後は出資や保証の機能も活用し、よりリスク・テイクできるようにする。既に「JBICアジア・環境ファシリティ」を発表しているが、アフリカを対象に民間支援のファシリティを21年度予算で要求することを検討中である。民間企業には、こうした枠組みをぜひ活用願いたい。

■ 安達・経済産業省貿易経済協力局長

経済産業省としても、国際協力における官民連携の重要性を痛感している。ODAをいかに国益に結び付け、国民の役に立っているかを示せるかが、予算拡大に向けた今後の大きなカギである。円借款供与対象国を考える際も、従来の債務持続性が問題となることが多いが、資源開発による財政好転、民間投資による経済成長、雇用拡大などの効果を考慮することが必要だ。経済産業省は、一見すると特定企業の支援に見えるいわゆる「1社支援」についても、開発効果が高く、案件選定プロセスの透明性が確保されるのであれば、積極的に推進すべきと考える。

【国際第二本部国際協力担当】
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