日本経団連タイムス No.2905 (2008年5月22日)

「自立した広域経済圏の形成に向けた提言」公表

−広域連携通じた地域の競争力強化策提案


日本経団連は20日、「自立した広域経済圏の形成に向けた提言」を公表した。同提言は、地域に広域連携による企業立地の促進と地域資源の活用を求めるとともに、国の支援策や企業による地域活性化への協力方策をまとめたものであり、日本経団連では、こうした国を挙げた取り組みこそが自立した広域経済圏の確立と道州制の実現につながるものと位置付けている。同提言の概要は以下のとおり。

広域連携による地域の成長戦略の策定

グローバル競争の激化や人口減少社会の到来等、わが国を取り巻く内外環境が大きく変化している。こうした中で、経団連ビジョン「希望の国、日本」でめざす豊かな国民生活とわが国全体の競争力強化を図るためには、国民の生活の場・企業の活動拠点である地域の活性化が喫緊の課題である。

しかし、国・地方を通じた厳しい財政制約の中、地域活性化のために大規模な財政出動を行うことは極めて困難となっており、また、交通・通信等の基盤整備により国民生活や企業の経済活動の範囲が広域化している。こうした状況の下で地域が取り組むべき課題は、それぞれの強みと特色を活かした成長戦略を、国民・企業の生活圏・経済圏に合わせた広域的な地域連携の下で策定し、その推進を図ることである。

ものづくりの機能強化を通じた企業立地の促進

企業立地促進は、地域活性化の最も有効な手段の一つであり、多くの地方自治体がその促進に積極的に取り組んでいる。これらの取り組みをより有効なものとするためには、多くの企業が日本国内の拠点に求めている「ものづくり」機能の維持・強化に必要な、人材育成・確保、技術の維持向上、インフラ整備等を広域連携により重点的に整備することである。同時に、企業のスピード感を共有し各種の行政手続きを簡素・迅速化することも強く求められる。

また、地域には、農林水産業、観光業、独自技術を持つ企業等の固有の資源もある。これらの資源をより有効に活用するためにも、自治体間が連携して産品の販路拡大等に取り組むべきである。

国による地域の広域連携への支援

国は地域のこれらの取り組みを補完し支援すべきである。例えば、企業立地促進法に基づき主務大臣の同意を受けた基本計画は、2008年3月現在、42道府県108件を数えているものの、県境を越えた広域的な計画はいまだ存在しない。国は地域の広域的な取り組みを重点的に推進・支援すべく、県境を越えた広域的な計画の優先的な採用や追加的インセンティブの付与等を検討すべきである。

また、広域連合制度を産業振興に活用するとともに、道州制への移行を促進するため、現状では北海道以外は三つ以上の都府県が合併しないと対象とならない道州制特区推進法を改正し、ブロック単位の広域連合においても道州制の先行的試行を可能とすべきである。

上記に加え、国は、地域の競争力強化に向けた取り組みを補完すべく、研究開発や人材育成、基幹的交通インフラの整備、対日投資の促進等の施策を実施すべきである。

経済界は地域との連携・協力を強化

地域の活性化に向け、経済界も地域の取り組みに積極的に協力することが重要である。日本経団連としても、地域の農業の活性化に向けた農業界との協力・連携の引き続きの推進に加え、この提言の公表を機に、全会員(08年5月現在、1650社・団体)に対して、社員食堂等における地元農産物の積極的活用(地産地消)を呼びかけている。

また、大企業やそのOBの有する技術・ノウハウを地域の中小企業等の活性化に活かすため、経済産業省が実施するOB人材と中小企業とのマッチングのための「新現役チャレンジプラン事業」について会員企業に周知し、登録を促進することとしている。

【産業第一本部産業基盤担当】
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