日本経団連タイムス No.2908 (2008年6月12日)

第101回日本経団連労働法フォーラム開催

−「多様化する人材活用に関わる法的留意点と実務対応」テーマに


日本経団連主催、経営法曹会議協賛による「第101回日本経団連労働法フォーラム」が5、6の両日、都内のホテルで開催され、全国から経営法曹会議所属弁護士152名、企業の人事担当者276名が参加した。
第101回となる今回は、改正パートタイム労働法や労働契約法の施行を踏まえて、「多様化する人材活用に関わる法的留意点と実務対応」を総合テーマに、弁護士報告では、パート社員の労務管理における法的留意点や正社員との均衡待遇の考え方、さらに有期契約社員や派遣社員も含めた労務管理のあり方やトラブル防止策について検討を行った。

多角的観点から企業の課題探る

また、佐藤博樹・東京大学教授による講演や、厚生労働省担当官による改正パートタイム労働法の相談事例解説など、多角的な観点から企業の取り組み課題について探った(弁護士報告、質疑討論の概要は次号掲載)。

「企業の人材活用と人材ビジネス」/佐藤・東大教授が講演

近年、企業が必要とする労働力の質的・量的変化が短期化しており、長期の継続的な雇用を前提にした人材の活用や育成が困難になってきている。また、財務的な視点から、他の経営コストと同様に人件費についても削減圧力が高まっている。そのため、正社員の量的絞り込みが行われており、常に不足気味である。一方、短期的な変化や将来への不確実性に対しては、有期雇用や派遣労働、請負を活用している。さらに短期的活用だけではなく、恒常的活用も増えている。

<人材ビジネスとの連携>

こうした人材活用の流れは変えることはできない。企業の人材活用において人材ビジネスとの連携は不可分である。派遣社員か請負社員かという選択の前に、会社全体としての人材活用ポートフォリオを設計する必要がある。まず社内の業務の中で外部化すべき範囲、内部処理すべき範囲を確定させ、汎用的な技能であれば、外部人材の活用が適切である。この区分けは、技術や人材活用の基本的な考え方に依存している。

<派遣ビジネスの社会的機能>

派遣会社を通じて、多様な派遣先で、仕事を経験しながら能力開発とキャリア形成を図ることができるなど、労働者派遣制度は派遣スタッフにとってもメリットがある。もちろんユーザー企業にとっては、直接雇用によらずに労働サービスを調達・充足できる。企業ニーズをうまくとらえた人材サービス会社は、派遣先、注文主の景況感に波がある中でも、その業績は常に安定している。

<生産現場における外部人材活用の課題>

1990年代以降、人材ビジネス会社がものづくりの担い手として登場した。企業は既に外部人材を恒常的に活用しており、その活用方法・スキルが競争力を左右するといっても過言ではない。外部人材活用に伴う逆機能として、正社員の多忙化、ノウハウ継承への負の影響、品質低下などが挙げられる。こうした事象は短期的には問題がなくても、中長期的には問題となる。背景には人材ビジネス側の管理能力の問題があるので、ユーザー側は契約単価だけではなく、人材ビジネスの管理能力、現場リーダーや外部人材の技能レベルなどを総合的に判断する必要がある。人材ビジネスを不況期だけ活用するというのではなく、中長期的な視点からいかに良好なパートナーシップをつくるかがカギとなる。

改正パートタイム労働法に関わる相談事例Q&A

富田望・厚生労働省雇用均等・児童家庭局短時間・在宅労働課調査官が、改正パートタイム労働法に関して、行政に多く寄せられている相談事例についてわかりやすく解説した。主要なQ&Aは次のとおり。

深夜労働は昼間労働と同一職務か。
肉体的な負担の違いや困難度の差異等、実態を見て判断。「時間帯が異なる=職務内容が異なる」わけではない。
差別的取扱い禁止に該当した場合、過去の差別的取扱い部分の賃金補償をしなければならないのか。
法第8条から直接民事効が生じるかどうかは司法判断。
福利厚生施設の均衡待遇について、業務の性質上更衣室の必要がない場合も利用させる必要があるのか。
必要がないと解される合理的な理由がある場合は必要ない。
正社員について本社一括採用している場合に、当該募集情報の周知は法を履行したことになるのか。
法の適用は事業所単位であり、短時間労働者の転換の推進も事業所単位で行う必要がある。
【労政第二本部労働基準担当】
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