日本経団連タイムス No.2910 (2008年6月26日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−「逆境を飛躍の好機に変える」テーマに


日本経団連は11日、大阪市内のホテルで関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長、渡文明副会長、中村邦夫副会長、森田富治郎副会長、前田晃伸副会長、佃和夫副会長、氏家純一副会長、大橋洋治副会長、岩沙弘道副会長、清水正孝副会長、奥田務評議員会副議長や、関西地区の企業会員代表者約320名が出席、「逆境を飛躍の好機に変える-地域の活力を引き出す」をテーマに意見交換を行った。

冒頭あいさつで御手洗会長は、1期目の成果として、減価償却制度の大改正や研究開発投資減税の充実、アジア諸国とのEPA(経済連携協定)の拡大を挙げた。関西経済については緩やかな改善がみられるが、油断は禁物であると指摘。経済の持続的な成長を確保するために、民間と地域の活力を最大限に引き出すための改革をスピード感を持って実行することが不可欠と述べた。また、政治の混乱で改革が停滞し、スピード感が必要とされるさまざまな重要課題について、議論を店晒しにすることは許されないと強く主張した。

■ 意見交換 I

意見交換 I では当面の政策課題について、まず、地球温暖化問題に対する取り組みについて、渡副会長が、日本経団連が提唱している「セクトラル・アプローチ」が、温室効果ガスの排出削減やエネルギーコストの低減につながると強調し、排出量取引制度については、企業の競争力を損なうおそれがあるので、慎重かつ徹底的に議論すべきと指摘した。菅谷節・ダイダン会長は、同社では建物の省エネルギー化に取り組んでおり、省エネルギー効果を保証するESCO事業推進に取り組んでいることを紹介。中小企業ではコストの問題から省エネルギー化の取り組みが進まないので、政府や民間による支援拡充が不可欠と述べたのに対し、渡副会長は、ESCO事業は排出削減に重要な役割を果たすと評価した上で、政府に対して中小企業に対する補助金制度の改善を働きかけたいとコメントした。

続いて道州制導入に向けた取り組みについて中村副会長が、「自立した広域経済圏の形成に向けた提言」の内容を説明。道州制導入のためには、地方自治体が、周辺の自治体との広域連携に取り組んで体質強化を図ることが必要であり、日本経団連が今年3月に策定した「道州制の導入に向けた第2次提言‐中間とりまとめ」 <PDF>にあるように、医療や介護などで住民にとって有益な事例を数多く示していくことが重要と指摘した。村上仁志・住友信託銀行特別顧問は、来月末には関西広域連合の設置に関する基本合意がなされる見込みであり、道州制を実現するための有効なステップになると紹介。これに対し中村副会長は、広域連合は道州制導入の機運を高めるとして、関西広域連合への期待を示した。

次に、社会保障制度改革に向けた取り組みについて森田副会長が、日本経団連が今年5月に策定した「国民全員で支えあう社会保障制度を目指して」の内容を紹介。増加する社会保障給付に対応するため、消費税を含む税制抜本改革が必要であり、持続可能な社会保障制度の観点から、基礎年金の税方式化は有力な選択肢と説明した。中野健二郎・三井住友銀行副会長からは、基礎年金の税方式化の意義を評価した上で、これに加え行政の徹底的な無駄の排除や確定拠出年金の充実が必要との発言があった。これに対して森田副会長は、経済活力を維持させていくためには、現役世代の負担に偏り過ぎないよう、高齢者も含めて国民全体で広く公平に支えていく方向に見直す必要があるとの考えを示した。

関西経済の課題で意見を交換

■ 特別報告

続いて日本経団連の特別報告として、まず氏家副会長が税・財政抜本改革への取り組みについて報告。氏家副会長は、改革のポイントとして、(1)社会保障と税制を整合的に見直し、社会保障費は消費税で賄うことを明確にした上で、消費税の引き上げを含む安定的な財源を確保すること(2)景気の先行き不透明感が増している状況を踏まえ、経済の活力を維持・強化するための税制措置を講ずること――の重要性を指摘した。続いて前田副会長が規制改革をめぐる動きについて報告。政府の規制改革集中受付月間制度を改善し、実現度合いを高める具体的方策の提言を含め、今年も規制改革要望を政府に提出する予定であると報告した。

■ 意見交換 II

意見交換 II では関西経済の課題について、関西地区会員から、「関西が世界の中で存在感を高めるには、京都、大阪、神戸といった個性的な都市を有機的に結合する情報・交通インフラの整備や広域的なグランドデザイン・戦略が不可欠」「都市開発市場の活性化や税制面のメニューの充実が必要」(竹中統一・竹中工務店社長)、「ものづくり技術の発展という観点から、関西大環状道路など計画道路の早期整備や京都から舞鶴経由でユーラシア大陸に伸びるサプライチェーン、大企業と中小企業間の協調体制や特に中小企業に対する支援が必要」(矢嶋英敏・島津製作所会長)、「中国市場における模倣品対策に関して、十分な防止策が取られていないのが現状。一層の取り組み強化が必要」(和田清美・アシックス会長)などの意見が出された。

こうした意見に対して、「わが国の主要都市が経済、政治、文化などの面で北東アジアの中心的役割を果たせるよう、今後の都市のあり方を提案したい」「ものづくり力を支える高い技術を有する中小企業と大企業の協力関係を推進し、大企業が有する技術・ノウハウを中小企業の技術継承・向上のために提供していくことが重要」(岩沙副会長)、「大阪港や、神戸港、舞鶴港などの物流インフラを広域的な観点から整備する関西の取り組みは評価できる。経団連が重視している貿易手続改革は着実に進展しており、省庁間の連携が不可欠」(奥田評議員会副議長)、「知財権の執行を強化する国際的枠組みである模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の早期実現が必要であり、4月17日のG8ビジネスサミットの共同声明でも、政府間協議の加速を求める内容が盛り込まれた。経団連として取り組みを進めたい」(佃副会長)などの意見が出された。

EPA締結への具体的議論展開に向け協力を/御手洗会長が呼びかけ

■ 総括

最後に総括した御手洗会長は、「関西地区会員が厳しい現状の中にあっても、飛躍に向けた好機ととらえ力を尽くしていることに感銘を受けた」と述べた上で、改めて地球温暖化への対応やものづくり振興の土台となるイノベーションの加速、米国やEUなどとのEPA締結の重要性を指摘。さらに6月2日から6日までハンガリー、チェコ、ポーランドの3カ国を訪問した中東欧ミッションについて、EUとのEPA締結に向けて、経済関係の緊密化のための方策について各国元首や経済界トップなどと議論できたと成果に触れた。その上で、関西はEU経済との結び付きが強く、EPA締結によるメリットが大きいと述べ、EPA締結に向けた具体的議論の進展に向け、関西経済界への協力を呼びかけた。

【総務本部総務担当】
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