日本経団連タイムス No.2917 (2008年8月14日)

東富士夏季フォーラム 第4テーマ

「変わるべきもの、守るべきもの−外から見た日本」

コロンビア大学教授、早稲田大学客員教授  ジェラルド・カーティス氏


課題提起

「日本の政治が遅れている」――これは日本の政治が日本の社会の変化に追いついていないことを表している。バブル崩壊後の社会の激変を日本の政治は反映していない。そして今、日本社会は自信を喪失している。しかし日本には「謙虚さ」「共同体意識」「勤勉さ」などの強みがある。こうした日本の良さをどう守っていくか、よりポジティブに考えるべきだ。

バブル崩壊後の1995年からの20年間は、日本近代史の中の第3の大変革期であろう。「失われた10年」と言われる90年代は大きな分水嶺であった。今の日本の政治は創造的破壊の段階であるが、破壊ばかりでクリエイティブなものが見えてこない。今こそ政治のリーダーシップが必要である。

また、最近の官僚バッシングの行き過ぎには注意が必要だ。官僚機構の改革は必要だが、壊してしまってはだれが政策をつくるのかという事態になる。今の日本に必要なのは、専門知識を持った官僚を使いこなせる政治家である。そして政治家には、国民に向けて政策をわかりやすく説明し、説得する能力が必要だ。今後、高福祉政策をめざすならば財源が必要であり、政治家は税制抜本改革の必要性についてきちんと説明すべきだろう。

「55年体制」では、民間企業が終身雇用という社会のセーフティネットを用意してきた。経済情勢が悪化しても、企業は解雇せずにコストを下げる努力をしてきた。非正規雇用の社員が増える中、公的なセーフティネットのあり方について改めて考える必要がある。

世界の中での日本の役割という観点からみると、存在感を落としている印象がある。「日本人の価値観=勤勉さ」は強みであり、日本の将来に対しては楽観視しているが、政治のリーダーシップが表れてこないと漂流していく危険性をはらんでいる。

意見交換

参加者の意見要旨は次のとおり。

カーティス氏の意見要旨は次のとおり。

【社会第二本部】
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