日本経団連タイムス No.2931 (2008年12月4日)

観光委員会が人材育成に向けた検討に着手

−産業界の意見取りまとめへ


日本経団連の観光委員会(大塚陸毅委員長)は、観光人材の育成に向けて本格的な検討に着手した。18日開催の企画部会(生江隆之部会長)を皮切りに、観光関連企業や学界関係者との懇談を行い、観光人材に対する産業界の意見を取りまとめる。

日本経団連は、2000年10月に「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」を発表し、観光立国の重要性を指摘した。以来、観光委員会が中心となって、魅力ある国づくりの観点から、観光立国推進基本法の制定を政府、与野党に働きかけてきたほか、近隣諸国との協力体制構築にも努めている。特に、今年9月16日には、観光庁の発足に合わせて、官民の推進体制の強化を訴える提言「観光立国の早期実現に向けて」9月18日号既報)を取りまとめ、観光庁に対して、官民協議会の設置や官邸機能を活用した政府内の総合調整を求めた。

また、10月7日には、韓国の済州島において、韓国の総合経済団体である全経連の観光産業特別委員会との間で、「第3回日韓観光協力会議」を開催した。この会議では、観光を日韓産業協力の柱としていくことに合意、人材育成や地域の観光資源開発といった観点から協力を進めていくこととなった。

人材育成に関する観光委員会の今回の取り組みは、こうした活動の成果を踏まえつつ、21世紀の観光を考える上では、観光人材の育成が喫緊の課題となっているとの問題意識に基づくものである。

人材育成で最も重要な役割を担う大学では、政府による観光立国宣言後、観光学部・学科の開設が相次ぎ、入学定員は4000人に達しようとしている。しかし、これら大学の輩出する人材と観光業界のニーズとの間にはギャップがあると言われており、卒業生のうち、観光関連企業に就職する学生は約2割にとどまっているという問題がある。

製造業では、工学部や理学部の研究成果が企業の製品開発に役立ち、また、企業における研究成果が、各分野の学問的な発展につながるケースが多々見られるが、観光分野でも、観光学の研究成果が、観光産業のあり方を考える上での理論や方法を提供するなど、産業界と学界との間で緊密で高度な協力関係を構築していくことが必要であると考えられる。

観光委員会では7月29日、和歌山大学の小田章学長から観光学部の設立と今後の展望について話を聴いているほか、今月18日に開催される企画部会では、東海大学の松本亮三教授を招き、観光学部と産業界との連携について説明を聴くこととしている。

【産業第一本部国土担当】
Copyright © Nippon Keidanren