日本経団連タイムス No.2947 (2009年4月16日)

日・EU経済統合の実現へ

−日・EU EPAに関する第二次提言公表


日本経団連は14日、「日・EU経済統合の実現を目指して‐日・EU EPAに関する第二次提言」を公表した。同提言の概要は次のとおり。

経済統合へ新たな枠組みなどを示す

■ 基本的な認識

日本にとってEUは、米国、中国に次ぐ輸出先、米国に次ぐ投資先であり、基本的な価値観を共有する重要なパートナーである。そのEUとの経済関係を支え、発展させるためには法制的な基盤を整えることが重要な課題である。
2年前にEUが韓国とのFTA(自由貿易協定)交渉をスタートさせたことによって、EU市場をめぐる競争において、わが国企業が韓国企業に比べて不利な状況に置かれるとの懸念が高まったことから、交渉開始直後に提言「日EU経済連携協定に関する共同研究の開始を求める」(2007年6月12日)を取りまとめ、公表した。

■ 前回提言後の状況

EUと韓国のFTA交渉については、4月初めの閣僚会合では決着がつかなかったものの、事務レベルでは暫定合意に達していることから、早晩妥結するものと思われる。そうなると、わが国企業は競争上不利な状況に置かれることになる。
また、金融・経済危機を背景に保護主義の圧力が高まる中、二国間・地域間で自由で安定的なビジネス環境を整備することは、難航しているWTOドーハラウンドの推進にも寄与するものと思われる。一方、EUをはじめ各国は、他国との制度・ルールの調和等による経済統合を通じて競争力や成長力の強化を目指している。以上から、わが国としても、EUとの間で制度・ルールの調和にまで踏み込んだEPAを結ぶことによって経済統合を目指す必要性が、この2年間でますます高まっていると言えよう。

■ 経済統合のための新たな枠組み

以上のような現状認識に基づき、経済統合を実現するための具体的な要素を、(1)経済関係を包括的にカバーするものであること(2)高い水準の自由化を実現するものであること(3)安定的な事業環境を実現するものであること(4)第三国との経済関係強化にも寄与するものであること(5)日・EU双方の構造改革を促進するものであること(6)政治・文化面の関係強化にも寄与するものであること――の6点に整理しているが、そこに至るには、EU産業界の一部に根強い、関税撤廃・削減への反対を乗り越えていく必要がある。厳しい経済情勢の中、EU側を交渉のテーブルに着かせるのは容易ではないが、EU側の関心事項である関税以外の障壁の引き下げなどを進めることによって、EU側の関心を引き出していくことが重要であると考える。

■ 経済統合の実現に向けた規制面の協力

そこで、関税以外の障壁を引き下げるため、日・EUが共同して取り組むべき規制面の協力事項をヒト、モノ、資本・サービスなどのより自由な移動という視点から提言した。
まず、ヒトについてはビジネス・パーソンの移動の円滑化を目指してはどうかと提言している。モノについては規格・基準の調和など技術的貿易障壁の引き下げ、ならびに標準化を通じた技術の普及などによる障壁の引下げを提言している。資本・サービスについては、新たに規制を導入する場合などには早期に意見照会を行う、あるいは法案段階で通報するなど透明性を確保するよう求めている。情報・知識については特許の相互承認などを提言している。これらに加え、EU側の関心の高い政府調達に関して情報入手の容易化なども盛り込んでいる。

■ 経済統合の実現に向けた協力の推進体制

最後に、経済統合の実現に向けた協力の推進体制として、首脳間で協力分野や作業工程に合意した後、双方の閣僚が主宰する協議体で、それを管理・推進し、その報告に基づき首脳間で具体的な措置を決定すべきとしている。スケジュール的には、5月初めの日・EU首脳協議において、新たな枠組み構築に向けた作業の開始に合意し、その上で遅くとも現行の「日・EU協力のための行動計画」が期限を迎える2010年末を目途に新たな枠組みに合意し、次期計画の中核にそれを位置付けるべきであるとしている。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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