日本経団連タイムス No.2957 (2009年7月2日)

世界的ナノテクノロジー拠点の形成へ

−経産省研究開発課長から説明を聴く/産業技術委員会重点化戦略部会


日本経団連の産業技術委員会重点化戦略部会(中村道治部会長)は6月22日、東京・大手町の経団連会館で、経済産業省産業技術環境局の土井良治研究開発課長から「つくばナノテク拠点(TIA nano)の形成」の説明を聴いた。土井課長の説明内容は次のとおり。

主要国では2000年以降、IMEC(ベルギー、Interuniversity Microelectronics Center)、アルバニー(米国、ニューヨーク州立大学アルバニー校)など最先端の研究拠点が急発展し、幅広い国際共同研究プログラムを提示することにより、世界中の民間企業から人と資金を集約している。これらの世界の動きに遅れることなく、世界に伍するナノテク拠点を形成するため、産学官で検討を進め、筑波大学、産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(物材機構)を中核に拠点形成する構想を取りまとめた。

■ 世界水準の6つのコア領域に集中投資、ナノテク中核拠点を一挙に形成

平成20年度第2次補正予算、今年度第1次補正予算で、経済産業省、文部科学省両省から計361億円が設備投資予算として計上された。これを6つのコア領域(パワーエレクトロニクス、ナノエレクトロニクス、N‐MEMS=マイクロマシン、ナノグリーン、カーボンナノチューブ、ナノ材料安全評価)に集中投資をする。またコアインフラ(新デバイス・新材料評価・試作ファンドリー、ナノ計測、MEMSファンドリー、オープンラボ、融合連携場)は、産業界にも価値あるインフラとしていきたい。筑波にはIMECを越える規模のクリーンルームが、また物材機構にも世界に誇れるナノ材料技術があり、これらを有効活用する。

6月17日には筑波大学の山田信博学長、物材機構の岸輝雄理事長、産総研の野間口有理事長、日本経団連の中鉢良治産業技術委員会共同委員長が参加した「つくばナノテクノロジー拠点運営最高会議」を開催し、産学官が組織の壁を越えて世界的拠点を形成する姿勢を打ち出すことができた。今後、コア領域ごとにワーキング・グループを設置し、具体的な推進方策を検討する。

■ 産学官連携による次世代ナノテク人材の育成

同拠点の特徴として、人材育成の機能を持つ「School of Nano‐Technology」の設置をめざすことが挙げられる。これは筑波大学、産総研、物材機構、国内外の関係大学の協力を得て国際連携大学院機能を付与する構想となっている。新たに設置される棟には学生が集い、共同研究を行う場とし、産学官連携を通じた次世代の人材を育成したい。スタンフォード大学の西義雄教授からもティーチングへの協力の示唆も受けており、カリキュラム等も国際スタンダードとして通じるものとなると期待している。産業界からもぜひ理想の大学院とするための意見を聞くとともに、準備作業へも参画してほしい。

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日本経団連はナノエレクトロニクス分野が、他の産業への波及効果の高い基盤技術となり得るとの観点から、今年2月に発表した提言「日本版ニューディールの推進を求める」で、ナノテクの研究拠点形成を国家的に推進すべき案件として挙げている。同拠点の形成により産業競争力強化に資する成果が多数実現するよう、今後ともその動向を注視していく。

【産業技術本部】
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