日本経団連タイムス No.2976 (2009年11月26日)

財政政策のあり方を提言

−経済危機からの早期脱却と生活の安心・充実に向けて


日本経団連は17日、政府の予算編成ならびに財政改革の取り組みを踏まえ、提言「経済危機からの早期脱却と生活の安心・充実に向けた財政政策を望む」を発表し、関係方面に建議した。
提言の概要は次のとおり。

■ 当面の予算編成にあたっての視点

1.経済危機からの早期脱却

2010年度予算の政府案を今年中に策定し、年度内に成立させることが重要である。
2009年度第二次補正予算において、雇用の安定・創出策など追加的な景気対策を講じるべきである。

2.生活の安心と安全の確保

社会保障分野での新規施策を通じて、制度の不備やほころびへの対応、セーフティネットの拡充を期待。あわせて制度横断的な視点に立って、適切かつ有効な仕組みにすべきである。

3.将来にわたる生活の充実に向けた投資

高齢化社会への本格的な対応、世界の低炭素社会の実現、生活の利便性の向上、競争力の強化などに向けて、雇用の創出・拡大が期待される分野の人材の育成、基幹的な空港・港湾等の整備、政府研究開発投資の拡充、イノベーション促進税制の拡充が必要である。

■ 財政政策に関する中長期的な課題

1.財政健全化への取り組み

デフレと低成長のもとでの財政健全化は困難であり、あらゆる政策手段を講じての、名目成長率の向上が必要。成長戦略を速やかに描き、経済成長力の強化による生活の充実を図るべきである。
あわせて直接税に依存する脆弱な財政基盤、社会保障費の増加といった課題に対応するため、税制抜本改革による安定財源の確保が必要。景気回復を前提に、かつ国民の理解を得ながら、段階的に消費税率を引き上げるべきである。

2.地方税・財政制度の抜本改革

まずは国から地方への補助金の見直しを機に、国庫補助負担金や地方交付税を改革し、さらに道州制推進基本法の制定による体制整備を行い、国と地方の税・財政制度を再編成すべきである。

■ 財政運営に関する課題

政府の歳出見直し、予算編成改革への取り組み姿勢を評価しつつ、透明度・実効性の高い財政運営を実現するための方策を提起している。

  1. (1)費用対効果分析・コスト効率化の徹底、剰余金や積立金の必要水準など特別会計への踏み込んだ見直しが必要。
  2. (2)縦割り行政の垣根を越えた電子行政の早期実現、予算編成・執行・決算までのPDCAサイクルの徹底、政策評価と予算編成の連携強化を図るべき。
  3. (3)歳出増に対応した歳入確保策を含めた「歳出歳入改革法」(仮称)の制定等を通じた制度的な担保が必要。
  4. (4)景気回復後を視野においた財政健全化目標を策定すべき。
【経済政策本部】
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