日本経団連タイムス No.2978 (2009年12月15日)

提言「経済危機脱却後を見据えた新たな成長戦略」公表

−新たな需要期待の5分野での需要拡大策と持続的成長支える3基本的政策実施を


日本経団連は15日、提言「経済危機脱却後を見据えた新たな成長戦略」を公表した。同提言は、経済危機脱却後を見据え、わが国経済が将来にわたって持続的な成長を実現していくために必要な経済政策について、取りまとめたものである。提言の概要は、次のとおり。

■ わが国経済の現状と成長戦略の必要性

世界同時不況の影響を最も強く受けたわが国経済は、最悪期を脱しつつあるものの、厳しい雇用情勢やデフレの進行など、依然として予断を許さない状況にある。また、人口減少社会の到来など、経済社会を取り巻く大きな構造変化のなかにあって、社会保障の綻びをはじめ、国民の将来への不安感が高まっている。
こうした状況を打開し、今後とも国内で雇用を創出しつつ、豊かで質の高い国民生活を維持していくためには、当面の経済危機からの早期脱却とともに、経済全体のパイの拡大を目指した成長戦略の早期策定と実行が不可欠である。経済が成長し、パイが拡大すれば、持続的な社会保障制度の構築や、財政健全化に向けた積極的な取り組みにもつなげることが可能となる。
今後、わが国が実施すべき成長戦略としては、以下に掲げる新たな需要が期待される5つの分野での需要拡大策と、持続的な成長を支える3つの基本的な政策の実施が急務である。

■ 新たな需要が期待される分野の検証と必要な施策

新たな需要が期待される分野として、(1)成長を続けるアジアとともに発展するための経済統合への深化への取り組み(2)太陽光発電や省エネ製品の普及といった資源・環境・エネルギー問題の解決への貢献(3)ICT(情報通信技術)の利活用による電子行政の推進(4)医療や介護分野を中心とした少子・高齢化社会への対応(5)農業や観光といった地域に根差した産業の振興を通じた地域の潜在力の発揮――の5つを掲げ、それぞれの分野で需要の顕在化に必要な施策を講じていくことが不可欠である。
なお、アジアの経済成長により、2008年に国内で130万人相当の雇用創出効果があったと推定されていることや、太陽光発電分野で2020年までに約11万人、医療・介護分野で2030年までに約170万人の雇用創出が見込まれていることから、これらの分野における需要の拡大は、経済成長とともに、国内での雇用創出にとっても極めて重要である。

■ グローバルな競争下での持続的な成長‐経済政策のあり方

持続的な成長に向けた基本的政策の3本柱として、(1)経済成長を促進する税制の確立やアジアにおけるビジネスインフラの整備等を通じた国際競争力を有する産業のさらなる強化(2)環境や医療・介護などの新しい内需を次の外需の柱に育てることによる成長力の源泉の創出と底上げ(3)多様な労働力の活用と質の向上――が重要である。

■ 成長戦略の着実な実施に向けて

提言で取り上げた成長戦略が、需給両面からバランスよく着実に実施されるよう、PDCAサイクルの実行により、継続的な評価を行う必要がある。

【経済政策本部】
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